| 楽章 | 形式 | 主調 | 拍子 | 形式上の変型 | 聴きどころ |
|---|---|---|---|---|---|
| I. Allegro non troppo | ソナタ形式 | ニ長調 | 3/4 | 提示部反復あり・冒頭が「序奏」に聞こえる複合主題・トロンボーンの暗い闖入 | 低弦の D–C#–D を覚えると、以後どの楽章にもこの3音が「分子」として潜むのが見える。牧歌の途中、m.32 のティンパニとトロンボーンで急に翳る。 |
| II. Adagio non troppo | 変形ソナタ形式(第2主題を再現で省略) | ロ長調 | 4/4(第2主題は12/8) | 展開部フガート・再現で第2主題を「嵐の楽節」が置換 | チェロが弱拍から歌い出す、重く沈んだ緩徐楽章。フガートが真の展開部を燃え上がらせ、再現では第2主題の代わりに嵐が来る。 |
| III. Allegretto grazioso | スケルツォ(2つのトリオ・五部形式) | ト長調 | 3/4→2/4→3/8 | 拍子とテンポが変わる変奏的トリオ・木管+チェロpizzのバロック風 | 4曲中もっとも短い、オーボエの優雅な主題。プレストのトリオでは農民の踏み鳴らしダンスになり、拍子まで変わる。 |
| IV. Allegro con spirito | ソナタ形式 | ニ長調 | 2/2(cut time) | 序奏なしで sotto voce に始まる・コーダが第1楽章と鏡像的に対応 | ささやくように始まり、m.23 の属和音の大爆発でエネルギーが解き放たれる。歓喜の直前に「あっ」という中断が2度あり、その後で勝利が来る。 |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1主題群(複合主題 X/Y/Z) | m.1 | D dur | – | X Y Z | チェロ・バスの D–C#–D(モチーフX)がラ(A)へ降り、ホルン/ファゴットの3度音型(Y)、木管の上昇音型(Z)が重なる。三者は伝統的な「旋律+低音」でなく対等で、Frisch は「抒情的な対位法」「分子構造」と呼ぶ。 m.17ヴァイオリン・ヴィオラが弱拍でひそかに入り、対称構造を崩す。 → 聴取:冒頭の低弦 D–C#–D を耳に刻む。これが全曲を貫く「分子」で、以後どの楽章にも顔を出す |
| 減和音の静止 | m.24 | D(属和音圏) | 無終止で静止 | Z | 弦が中低音域へ下り、属七の中をさまよって m.31 で減三和音(シ-レ-ファ#)に立ち止まる。 → 聴取:いったん進行が止まる。この「間」の直後に暗い雷鳴が来る |
| トロンボーンの闖入 | m.32 | D(属準備) | – | Tb/Tuba | ティンパニがレ音をロールし、トロンボーン・チューバの暗い和音が「これまでのどの音色とも違う、全く新しい音の世界」に聴き手を招き入れる(Frisch p.139)。ここまでが「序奏」のように振る舞う。 → 聴取:牧歌の途中で急に翳るこの暗い金管を聴く。1879年ラッハナーが抗議し、ブラームスが「黒い翼」の返信を書いた箇所 |
| 経過主題(真の主題到達) | m.44 | D dur | – | P | ようやく拍節感の強い主和音の基本形に着き、輝かしい主題が歌い出す。X・Y・Z 全部がここでにじみ出る(譜例6-2)。ただし安定は長続きせず経過部へ変形。 → 聴取:ここで初めて「主題らしい主題」が立つ。冒頭は準備で、真の到達はここ |
| 第2主題(子守唄) | m.82 | fis moll | – | S | 嬰ヘ短調の大らかな子守唄風主題(チェロがヴィオラの上に乗る)。Frisch はシューベルト風の「3つの調を持つ呈示部」の援用と読む(p.140)。 m.90不協和で休止、ヴァイオリンの掃きあげ。 → 聴取:牧歌の中の、嬰ヘ短調に翳った子守唄。長調でなく短調に据わるのがこの曲の憂い |
| 終結群 | m.118 | →A dur | イ長調へ到達 | K | 上向跳躍の行進曲風主題で属調イ長調へ。 m.134ダブル・ドミナントで凍り付き、「よくある」リズムが鼓動のようなシンコペに化す。 m.136ファゴットと低弦の新主題(モチーフZから生成)が2拍目からカノン展開——伴奏のずれで聴き手は2拍目を小節の頭と錯覚する。 m.156子守唄が拍節感を取り戻す。 → 聴取:迷子になるようなカノン。拍の頭が分からなくなる不安が、牧歌の下の翳りと響き合う |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 展開開始 | m.179 | A→F dur | – | X/P | ホルンが第1主題をヘ長調で——モチーフXの「ラ」がニ調の5度でなくヘ調の3度へ組み替わり、5度圏をフラット側へ多段移動する(Frisch pp.140–141)。 m.191フルートが主題を変ロ長調で。 → 聴取:同じ主題が、遠いフラットの調で色を変える。3度関係で調が横滑りしていく |
| 対位法のクライマックス | m.216 | a→h moll | – | X | 対位法が頂点に達しトロンボーンが加わる。 m.224弦のアルペジオの上でトロンボーンがモチーフXを咆哮。 m.234モチーフXがここで「完成型」となる(p.141)。 → 聴取:金管が X を叩きつける展開の頂点。冒頭でつぶやかれた3音が、ここで最大の姿になる |
| Xの8小節旋律・再移行 | m.274 | →G→下属圏 | – | X | リズムを大きく変え、モチーフXによる8小節の旋律(譜例6-3)。 m.290直後に突然2小節ひと組へ縮める——Frisch が「何という凄い効果!」と評す(p.141)。 m.298下属和音系(ii7/Gm6)で8小節が統一され、トロンボーンがXを4小節に引き伸ばす(譜例6-4)。 → 聴取:8小節→2小節への急な圧縮。時間が畳み込まれるようなスリル |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・変容・提示部との差異 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1主題再現 | m.302 | D dur | V/V→V の解決に重なる | P' | 低音が V/V(ミ)から V(ラ)に解決する瞬間に再現が始まり、オーボエにモチーフYが現れる。主音を奏すべきモチーフXは、第1トロンボーンに4小節に引き伸ばして埋め込まれている(レ→ド#→レ、譜例6-4中声部)。差異:主題の帰還を、提示部にない仕方で低音金管に潜ませる |
| 壮大な転調拡大 | m.319 | A→h moll | – | P拡大 | m.44 の主題が序奏主題に寄り添い、大らかな反復進行で拡大——イ長調からロ短調へ、フラット系和声を優雅に織り込む19小節以上の転調(pp.141–142)。差異:提示部にない長大な調の旅がここで開ける |
| 牧歌的音色への収束 | m.342 | D dur | – | Tb/Hn | m.342/344 でティンパニが2度ロールするが、今回は金管の返事がない(提示部 m.32–43 の変質)。 m.3463度目のロールの後、トロンボーン・チューバにホルンが加わり牧歌的な音色に——この響きでコーダが始まる。差異:提示部の暗い闖入が、ここでは柔らかな金管に転じる |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| コーダ本体(夢のような音楽) | m.447 | D dur | – | X反行 | ホルンの哀愁を帯びた夢のような音楽(モチーフXの反行形)。Frisch は「ブラームスの作品中最も多彩、かつ交響的」と評す(p.143)。 m.477第1主題の変奏(più tranquillo)が8小節単位の安定した旋律に。 → 聴取:嵐のあとの、夢見るようなホルン。緊張がほどけ、時間がゆっくり流れる |
| 歓喜と最後の翳り | m.497 | D dur | ニ長調の全終止(m.521) | 自己引用 | m.66 の跳躍音楽が回帰。 m.501フルートとオーボエが、同じ夏の歌曲『Es liebt sich so lieblich im Lenze』作品71-1(春の象徴)に近い旋律を奏でる——ブラームス自身が自用スコアに「Es liebt sich so」と鉛筆で書き込んだ(Frisch p.144)。 m.521全金管とティンパニが最終和音を鳴らすが、そこにトロンボーン・チューバの暗さが「暗き淵」から戻る——「この暗さは際立っており、今後も決して無視できない」(p.144)。 → 聴取:陽気な結末のただ中に差す、一瞬の暗さ。牧歌の底の翳りは最後まで消えない |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1主題(チェロ) | m.1 | H dur | – | P | チェロが主題を歌い、ファゴットが上昇対旋律で、チューバが低く支える。弱拍のファ#(属音)から出て、a-a'-b-c-c' と展開。b の シ→ミ(上向4度)が楽章の要のモチーフになる。 m.6カデンツを回避してニ長調へ寄る。 → 聴取:チェロが弱拍から重々しく歌い出す。着地しそうで着地しない旋律の、宙づりの重み |
| 対呈示とモチーフg・フガート | m.12 | H dur | – | g | 全奏で主題を対呈示。c の尾のシ→ミ(上向4度)からモチーフg が生まれる。 m.17ホルンが g を奏すと、オーボエ・フルート・チェロがフガートに加わる。 m.27フガートが消え、b が雄大なクライマックスを築く。 → 聴取:上向4度が発展の合図になる。この小さな音型が、のちに展開部で嵐を呼ぶ |
| 第2主題(12/8・舞曲風) | m.33 | fis dur | 嬰ヘ長調の全終止 | S | 拍子が 12/8「grazioso」に変わり、フルート・オーボエが舞曲のような主題を歌う(第1主題の3和音型・音階下降型の変奏)。 m.45上昇4度を音階で埋める終結主題が続き、ロ短調へ向かう。 → 聴取:拍子が 12/8 に変わり、束の間ステップを踏むよう。重い4/4のなかの、つかのまの軽み |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 嵐のフガート | m.49 | h moll | – | K/g | 終結主題による嵐のフガート——提示部 m.17 で芽生えた工程が、ここで真の展開部として燃え上がる。 m.55わずか6小節で減七の和音に突然休止(弦トレモロ)、木管の間に上昇3度モチーフ。 → 聴取:短くも激しいフーガ。提示部の穏やかな上向4度が、ここで牙を剥く |
| 「偽の再現」「偽の出発」 | m.57 | g dur→E dur | – | P断片 | m.57 でヴァイオリンに第1主題が戻るが、場違いなト長調——再現部の頭ではない「偽の再現」。 m.59主題は砕けて居場所を求めさまよう。 m.62オーボエの主題がホ長調で「偽の出発」。 → 聴取:主題が戻ってきたと思わせて、違う調ですぐ崩れる。本当の再現はまだ先だという焦らし |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・変容・差異 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1主題再現(3連符に変奏) | m.68 | H dur | – | P' | 主題が3連符に装飾され、12/8 と 4/4 が混ざる。 m.70上向4度で拍節を取り戻し、トロンボーン・チューバが加わってホ長調へ逸れる。差異:提示部の素朴なチェロ独唱が、色彩豊かな変奏へ |
| 第2主題の位置に「嵐」 | m.87 | h moll | – | g爆発 | 再現部は第2主題を省き、代わりにつつましかったモチーフg が奔放に炸裂する短い展開を置く——フォルテの「だめ押し」(Frisch p.149)。差異:抒情の第2主題が、嵐の副次展開に置き換えられる(この楽章の頂点) |
| 終結主題再現 | m.92 | H dur | ロ長調 | K' | 明確な 12/8 の終結主題が全奏に戻り、ティンパニ・ロールとホルンのオクターヴが支える。差異:嵐のあとに終結だけが穏やかに帰る |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| コーダ(帰り着けない旅) | m.97 | H dur | ロ長調 | a対旋律 | 拍子が 4/4 に戻り、ファゴットがフレーズa の対旋律を冒頭と同じ形で担う。第1主題そのものはまだ戻らない——大旅行の果てに自分の土地に帰り着けない、という Frisch の読み(p.149)。ティンパニの3連符が弱音で色を添える。 m.100弦が暗く断片化し、最終和音へ。 → 聴取:主題の全き回帰を、あえて与えないまま閉じる。満たされなさが余韻になる |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 主題 a / b / a' | m.1 | G dur | – | A | オーボエのメヌエット風主題を、チェロのピチカートが「歩く」低音で支える(古典・前古典派を思わせる先祖返り)。 m.11ミ→レの尾から新主題 b。 m.23a' 変奏。 → 聴取:木管+チェロのpizz.という古風な音色。直前の重い緩徐楽章から、時代をさかのぼったような軽さ |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| スケルツォ変奏・農民のダンス | m.33 | G→C dur | – | A変奏 | 拍子が 2/4 に変わり、走り回る弦がアレグレット主題を驚くほど正確に変奏する(Frisch p.151)。 m.51低音が初登場し、低Cペダル上で農民の踏み鳴らしダンス(ハ長調)。 m.71ダンスが弱音で回帰。 m.1013小節フレーズで 2/4 から 3/4 へ拍節が橋渡しされる。 → 聴取:同じ主題が倍速のダンスに化ける。優雅なオーボエ主題と、田舎の踏み鳴らしが地続きだと分かる |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| 主題再開・11回反復 | m.107 | a→G→e | – | A' | 主題がイ短調の和音で始まり m.109 でト長調に。 m.1143連符の下降音型が11回反復され、ト長調から暗いホ短調へ沈む。 → 聴取:同じ下降音型がしつこく繰り返される。優雅さの陰に沈む影 |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3/8 の第2トリオ | m.126 | G→C→A dur | – | B変容 | 拍子が 3/8 に変わり、8分音符が音階を駆け降りる。 m.132木管が農民ダンス(トリオ1の素材)を「ケルト」的な色に変容(イ長調)。 m.1882つの 9/8 小節を経て 3/4 へ戻り、ト長調でなくロ長調へ向かう。 → 聴取:同じダンスが3/8で軽やかに変身する。2つのトリオが同じ素材の変奏だと分かる |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| A''(楽章間の連関) | m.194 | fis→G dur | – | A'' | 主題が主調から遠い嬰ヘ長調で入り、ロ長調へ転じるとき、その形と調から直前の第2楽章アダージョの主題が浮かぶ(Frisch p.152)。 m.205弦の音型が変わり、第1楽章のモチーフX がその本来の形に近い姿で顔を出す(p.153)。 → 聴取:短い楽章の再現部で、前後の楽章がふっと差し込む。全曲が一つの網であることの証し |
| コーダ(最暗部と過去への退去) | m.219 | G→g moll→G | ト長調(ヘミオラ終止) | 新旋律 | m.219 は冒頭 m.23–28 の反復。 m.225ヴァイオリンが molto dolce で哀切な新旋律を花開かせ、ト短調に解決(譜例6-16)。 m.235楽章中もっとも暗い場面——主題aが3小節しか与えられず、不完全な減和音(半減七)で凍り付きフェルマータ(譜例6-17)。 m.236古典的メヌエット風の終止(隠れたヘミオラ)。「このアレグレットは終結するために、自分の世界を抜け出して過去の音楽の世界へ行かざるを得なかった」(p.154)。 → 聴取:軽やかな楽章が、最後にひやりと凍りつく。過去へ退くようにして閉じる |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1主題(sotto voce) | m.1 | D dur | 半終止 | P(X由来) | ユニゾンの弦が sotto voce で主題を出す。冒頭3音は第1楽章冒頭と同じ D–C#–D、これに下降4度モチーフが「完備」する。 m.22半音階の声部に沿って遠のき、全くの無音——第1楽章の「糸を解く」箇所(m.20以降)に似る。 → 聴取:拍子抜けするほど静かな開始。大団円の交響曲が、まずささやきから立ち上がる |
| 爆発(対呈示) | m.23 | D dur | – | P' | おまけの無音拍のあと、ニ長調の属和音がフル・オーケストラで大爆発し、m.24 のフォルテで主題を高らかに対呈示——抑え付けられていたエネルギーが全解放される(Frisch p.156)。 m.44下降4度モチーフが鋭角的に拡大。 → 聴取:ささやきが、突然オーケストラ総出で炸裂する。この落差が第2番フィナーレの推進力 |
| 第2主題(largamente) | m.78 | A dur | – | S | 属調イ長調で、温かく歌う主題(冒頭音型の反行形)。 m.114第1主題の回転音型が終結素材として祝祭的に戻る。 m.122静かな「中断」——pizz 弦と木管の3度走句。 → 聴取:激しい第1主題群のあとの、大らかな第2主題。広く息をする旋律 |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 展開 第1部 | m.155 | D→e→fis moll | – | P断片 | 冒頭4小節をそのまま出したあと、3音図形の交替で暗い短調へ。 m.184第1主題の第2フレーズ(=m.9)を嬰ハ短調で力強く。 m.189m.44 の変形が大クライマックスを築く。 → 聴取:陽気な主題が短調で険しくなる。牧歌の下の翳りが、ここで前面に出る |
| 展開 第2部(Tranquillo) | m.206 | fis→b moll | – | P変奏 | 「Tranquillo」で第1主題冒頭の3連符変奏。 m.214オーボエが下降4度の第2フレーズを変ロ短調で。 → 聴取:嵐の合間の、内省的な静けさ。次の再移行の荘重さへの準備 |
| 再移行(マーラー的前触れ) | m.234 | C→D minor | – | Tb/Tuba | 弱音・神秘的な場面で、コントラバス・トロンボーン・チューバがこの楽章で初めて登場し、下降4度を倍の音価でコラール風・ピアニシモに奏でる。Frisch は「マーラーが10〜11年後に『第1番』序奏を書いたとき、頭の中でこの部分が鳴っていたのは間違いない」と言う(p.157)。 → 聴取:低い金管が荘重に沈み込む数小節。マーラー『巨人』の夜明けを先取りするような響き |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・変容・差異 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1主題再現(昇る太陽) | m.244 | D dur | – | P'' | ニ短調のあとのニ長調が清新に射す。トーヴィは「闇の中で元の調に帰りつくと、第1主題が、昇る太陽が西空の雲に映す鈍い光のように姿を現す」と評す(p.158)。 m.264m.23 の輝かしい爆発(導入アルペジオの向きを反転)。差異:提示部の一時しのぎの解決はもうない。主調で堂々と据わる |
| 第2主題再現 | m.281 | D dur | – | S' | 第2主題が主調ニ長調で再現。 m.317祝祭的な終結素材(m.114対応)。差異:A dur(提示部)→D dur(再現部)。属調の緊張が主調に解ける |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| コーダ本体(全音下降) | m.353 | d→C→B♭ | – | S変奏 | トロンボーン・チューバが登場し、第2主題をもじった音型を力強く吹く。Frisch はこのコーダが第1楽章と「完全に対」をなし、それ自体で全曲をまとめ上げると言う(p.158)。和音はニ短調→ハ長調→変ロ長調と全音間隔で降下。 m.371変ロ長調が七の和音=ニ長調のドイツ六に(『ピアノ協奏曲第1番』冒頭と同じ調関係)。 m.373一旦停止——第1楽章の「糸を解く」動作(低音シ♭→ラ→ソ#が第1楽章 m.37 のトロンボーンを想起、譜例6-22)。 → 聴取:勝利へ向かう途中の、全音ずつの沈み込み。第1楽章の暗い金管が、ここで谺のように戻る |
| 「あっ」という中断と勝利 | m.387 | D dur | ニ長調の全終止(m.429) | P/S | 第1主題の頭がフォルテで戻り、大団円は目前。だが「あっ」という中断が2つ用意される——音階が m.408 の途中で突然静止、m.412 でもう一度(ハイドンのフィナーレに通じる休止。全曲を貫いた「解決を遅らせる」身振りへの最後の注意喚起)。 m.417その後でこそ、第2主題冒頭が陽気に回帰し(ホルン・トランペット→トロンボーン・チューバ)、輝かしい勝利で全曲を閉じる(Frisch p.160)。 → 聴取:歓喜になだれ込む直前の、二度の「はっと止まる」瞬間。止まってから勝つ——この呼吸が第2番の結び |