| 楽章 | 形式 | 主調 | 拍子 | 形式上の変型 | 聴きどころ |
|---|---|---|---|---|---|
| I. Allegro con brio | ソナタ形式 | ヘ長調 | 6/4(第2主題は9/4) | 提示部反復あり・展開部が極端に短い・再現部が属準備なしで噴出 | 冒頭の F–A♭–F モットーを覚えると、英雄的に流れ落ちる弦の主題がそこから生まれるのが見える。最後は意外なほど静かに閉じる。 |
| II. Andante con moto | 修正短縮ソナタ形式 | ハ長調 | 4/4 | コラール風第2主題が再現部で省かれ、終楽章へ持ち越される | クラリネットとファゴットだけで始まる静かな木管コラール。再現が縫い目なく入ってくる瞬間が聴きどころ。 |
| III. Poco Allegretto | 三部形式(間奏曲+トリオ) | ハ短調 | 3/8 | 再現で主題の担い手がチェロ→ホルン独奏→オーボエと音色を替える | あの有名なチェロの哀切な歌。再現ではホルン独奏が同じ旋律を歌い、色合いが変わる。 |
| IV. Allegro | 変型ソナタ形式(展開部と再現部を結合) | ヘ短調→ヘ長調 | 2/2 | 第1主題が展開部の前に再現・第2楽章コラールが循環主題として3度回帰 | 嵐のような短調の出発。終盤、第2楽章のコラールがヘ長調で燃え上がり、最後は第1楽章主題が静かに還って消える。 |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1主題群 P(モットー) | m.1 | F dur | – | Motto P-a | 木管+高音金管が F–A♭–F モットーを全音符で強奏(F上は長三和音、A♭上は減七)。直後にヴァイオリンが passionato の主題を2つの下降で流し落とす。 m.74音上行+モットー派生動機(C–E♭–C–E♮、続いて F–A♭–F–A♮)。 → 聴取:最初の3つの和音 F–A♭–F を耳に刻む。これが全曲の種。長三和音と減七が交替する明暗の揺れがすでに鳴っている |
| 第1主題群 終止 | m.11 | F dur | ヘ長調の完全終止 | P-b | シンコペ和音に対し旋律が下降、B♭上のモットーが導音Eへ跳躍、木管が F–A で応答してヘ長調の充実したカデンツに到達。 → 聴取:英雄的な下降がいったんヘ長調で着地する手応え |
| 移行部 Tr | m.15 | F→A♭ | ヘ長調の終止(Tb強調) | Tr | フルート/クラの「3つのF」に上行Aが応答、付点上行から急速旋回。 m.21F–A♭–F モットーが和声化され、A♭が転調を駆動しはじめる。 → 聴取:反復するFに上行Aが応える掛け合い。和声化されたモットーが調を押し開く |
| 異名同音転調 | m.29 | →A dur | イ長調へ到達 | Tr' | 巧妙な異名同音転調:A♭ を G♯(E属和音の第3音)と読み替え、m.31 でイ長調へ到達。モットー第3音が高い C♯ になり、第2主題へ減速する。 → 聴取:A♭ がそっと G♯ に変わり、暗い和音が明るいイ長調へ開く瞬間 |
| 第2主題 S | m.36 | A dur | – | S | 拍子が「しなやかな9/4」に変わり、独奏クラリネットが主題を mezza voce で歌う(ヴィオラが重複)。 m.40主題を全合奏で再陳述。 m.44木管主導の快活な応答句、オーボエの下降旋回線、一歩下げて B 長調で反復。 → 聴取:9/4 で揺れる独奏クラの抒情。拍が大きく伸び、第1主題の緊張がほどける |
| 第2主題 反行・移行 | m.47 | A | イ長調の終止(移行で中断) | S(反行) | 弦(バスなし)が第2主題の近似反行形を下降として提示。 m.496/4 に復帰、首席オーボエが A 上のモットーを属調の導音へ跳躍させる。 m.56アルペッジョを3拍→2拍に締め、「ずれた6/4の中の3/2」を含意して緊張。 → 聴取:主題が反転して下りてくる。静かな背景に、オーボエが乗せるモットー |
| 終結群 K | m.59 | a moll | 頂点(イ短調) | K | m.59 で拍節が復帰し、下降3度→下降2度を叩きつける和音でクライマックス。 m.61イ短調の憂いを帯びた情熱的な旋律(フルート・ファゴット・Vn)、クラ/ホルンが A 上のモットーを織り込む。 m.65全木管ユニゾン、弦が力強い対位法を反進行で重ねる。 m.70Vn の下降アルペッジョがモットーの音程を埋める。m.71a=第1エンディング(提示部反復へ)。 → 聴取:モットーを織り込んだ哀しい旋律で提示部が閉じる。反復の有無で曲の長さが変わる |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 展開開始 | m.77 | cis moll | – | S変容 | 第2主題を 9/4→6/4 に変容、低弦+ファゴット 対 脈打つ Vn。 m.90木管が快活な応答句(m.44由来)を6/4で力強く展開。 → 聴取:抒情主題が嬰ハ短調で険しく姿を変える |
| ホルンのモットー旋律(情緒的頂点) | m.101 | Es dur | 終止中断(m.109) | Motto | m.94 でト長調にとどまって漂い、半音で沈下して変ホ長調を予告。 m.101首席ホルンが G–B♭–G でモットーを温かく立ち上げ、動機が実際の旋律へと伸びていく——短い展開部でもっとも印象的な高まり。 m.109モットー旋律が G♭ へ届き、poco rit. で減速。 → 聴取:ホルンが歌うモットー。短い展開部のなかで最も豊かな高まり |
| 再移行(骸骨化した主題) | m.112 | es→b moll | – | P骨組 | 神秘的な気配のなか、低弦+ファゴットが第1主題の骨組みを無伴奏で這わせ、本来の6/4拍を欠いたまま進む。 m.116低い F 保持+ティンパニ・ロール(この F は B♭ の準備属音で、まだ主音ではない)。 → 聴取:深部で脈を欠いたまま這う主題。噴出の直前の低い F とティンパニに耳を澄ます |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・変容・提示部との差異 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1主題再現 | m.120 | F dur | 主音到達(属準備なし) | P' | 異例なほど劇的で、痙攣するように噴き出す。属和音の準備なしにヘ長調が主音として爆発し、モットーを4小節に引き伸ばす。m.124 以降は提示部に一致。差異:属準備を欠いたまま F に激突。モットーが4小節に伸長する |
| 移行部再現 | m.136 | F→D dur | – | Tr' | m.15 と同様に開始。 m.142m.29 に対応する異名同音転調だが、m.21/23 のモットー+移行は省略され、F♯ がニ長調の属音へ向かう(第2主題が4度上の調へ進む典型処理)。差異:到達先がイ長調ではなくニ長調。m.21/23 を省略 |
| 第2主題再現 | m.149 | D dur | – | S' | 9/4(m.36対応)。クラリネット+ファゴットが sotto voce(提示部の mezza voce よりさらに抑えて)。 m.156弦の第2主題反行形(m.47対応)がヘ長調へ引き込まれる。差異:音色変更+一段と弱音。主題反行が故郷ヘ長調へ舵を切る |
| 終結群再現 | m.158 | F→g/d moll | – | K' | m.158:オーボエのモットーが原位置の F 音から。 m.162低弦が予想外にト短調へ跳ね上がる。 m.170第2主題がニ長調だったため、終結主題はその平行短調ニ短調に落ちる。 m.174ホルン応答にトランペットが加わる。差異:終結主題がニ短調へ落ちる調的な迂回。長く抑えられた属音 C はコーダ(m.183)で初めて主張される |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| コーダ(長短の決着) | m.183 | F(属C上) | – | P'' | 全編成で第1主題を原音高で。ただしバスのモットーは C–E♭–C(F でなく)、第2下降が A♭ でなく A で始まる——長短の闘争がここで動く。 m.195m.11 の下降を全合奏で強奏し、属(C)と下属(B♭)を交替、F は主にティンパニが受け持つ。 → 聴取:A♭ が A に替わる一音の違い。明暗の天秤がわずかに長調へ傾く |
| 結尾(静かな閉じ) | m.201 | F dur | 終止的な身振り(m.209) | P(派生) | m.201:主題から派生した穏やかな新旋律(旋回+下降4度)で和声がようやく F へ。 m.209木管が退場し、弦が F へ到達、問いかけるような音型をオーボエ→ファゴット→ホルンで受け渡す。 m.216低弦が最終拍に F 長調アルペッジョで割り込み拍節をずらす。 m.220第1主題の最初の下降が楽章を閉じ、弦が急速に減衰、低弦ピチカートの下降が F で消える。楽章は意外にも静かに、変容したヘ長調和音で終わる。 → 聴取:嵐が引いたあとの優しい主題。最後は拍を外したアルペッジョが静かに溶ける |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1主題(木管コラール) | m.1 | C dur | – | P-a | クラリネット+ファゴットのみの穏やかな旋律(下降4度で終止)。第1楽章コーダの旋律に似て、m.3 の付点がモットーを想起させる。 m.5付点+低弦エコーがホ短調・ト長調へ和声的に迂回。 m.9イ短調を経てハ長調へ、オーボエが初登場して情のこもった下降線を歌う。 → 聴取:木管だけの素朴なコラール。弦も金管もまだ鳴らない。オーボエが入る瞬間に色が差す |
| 第1主題の延長と移行 | m.21 | C→G | 完全終止へ | P-b / Tr | m.21:木管が句末を延長し最初の本当の到達。 m.24オーボエの16分装飾、ヴァイオリン初登場、和音交替が拍節を乱しはじめる。 m.33交替和音が拍節をすっかり覆い隠し、Gの目標がイ短調を経てイ長調終止へ。 → 聴取:ヴァイオリンが入ると同時に、拍の輪郭がにじむ。不思議な浮遊感が生まれる |
| 第2主題(コラール風) | m.41 | G dur | – | S(循環) | 峻厳なコラール風主題=クラリネット+ファゴットの素のユニゾン(付点上拍下拍+三連符)。この主題が終楽章へ持ち越され、循環主題になる。 m.46オーボエ+ホルンが4度上で再陳、第4小節で意表を突くロ短調へ。 → 聴取:剥き出しで神秘的なコラール。ここを覚えておくと、終楽章での再会に気づける |
| 新着想と終結材料 | m.51 | G→D→G | – | S-b / K | m.51:弦の新しく優しい楽想(semplice)、ト→属ニ、即座に木管が反復。 m.63D が G へ解決、Vn が三連符で装飾、ヴィオラ/チェロ/ファゴットが主題のより活発な変形を弧状に。 m.68三連符が低弦を影付け、両主題の上拍下拍を回想して展開部へ細る。 → 聴取:歌うように素朴な応答句。三連符の彩りが増えて音楽が静まっていく |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| 展開(短い緊張) | m.71 | H dur→f/C | – | P断片 | m.71:弦のみ、鮮やかな和声の転換でロ長調へ。 m.74F/D♭ の並置が第1楽章提示部の移行を想起させる。 m.77ヘ短調の属 C 上で減七和音を小節線越しに保持、第1Vn が急降下。 → 聴取:予想外に明るいロ長調の和音が一瞬差す。すぐに不穏へ落ちる |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・変容・差異 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1主題再現(忍び込む) | m.85 | C dur | – | P' | m.80:Vn が主題頭を16分音符で強奏し、ハ長調が徐々に戻る。 m.85巧みに拍をずらして、フルート/クラ/ファゴットのうちに再現がそっと入ってくる。 m.86上拍開始(保持音なし)、展開部の16分音型を弦が継続。差異:再現が縫い目なく忍び込む。冒頭が新しい管弦楽法(弦の16分音型)で戻る |
| 第2主題の置換(新主題) | m.105 | 上昇→頂点 | – | 新S | m.105:移行と元の第2主題の大部分が、この新材料に置換される。 m.108きわめて情熱的な新「第2主題」(長音+下降5度の反復)が大クライマックスへ。省かれたコラールの代理。差異:コラール風第2主題は再現されず、うねる新しいロマン的旋律が代わりを務める(省かれた主題は終楽章へ) |
| コラールの残響 | m.116 | G→C | – | S断片 | 元のコラール風第2主題の残りをそっくり4度上で——コラールはこの断片だけが生き残る。差異:第2主題はわずかな断片に縮減 |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| コーダ(変格終止) | m.122 | f moll→C dur | 変格終止(短調下属) | P'' | m.122:主題冒頭を原クラリネットで、執拗な C ペダル、ファゴットの半音和声(A♭=ヘ短調を示唆)。 m.132ヘ短調アルペッジョが、この世ならぬ響きの最終ハ長調和音へ=短調下属による変格終止。この F と A♭ が第1楽章モットーを反映する(循環の予兆)。 → 聴取:頑固な低音の上で冒頭句が戻る。最後は静かに輝くハ長調和音へ落ち着く |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 担い手 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| A主題 a(初出) | m.1 | c moll | 半終止(m.9) | Vc | しみじみともの寂しい mezza voce の短調主題をチェロが付点上拍で歌う。Vn 三連符・ヴィオラの弧・ピチカート低音が支える。 m.912小節に拡大、五連符の旋回から強い半終止。 → 聴取:柔らかく切ないチェロの歌。交響曲随一の名旋律。m.9 の五連符のひと振りが聴きどころ |
| A主題 a 反復 | m.13 | c moll | ハ短調の完全終止(m.21) | Vn1 | 第1ヴァイオリンで主題反復、クラリネットが加わる(シンコペ)。 m.21三連符を第2Vn/ヴィオラで分割、半終止でなく完全終止して b 部へ。 → 聴取:同じ旋律が今度はヴァイオリンで。音色が一段明るくなる |
| A主題 b(長調の慰め) | m.24 | C dur | – | Vc | 心を癒やすような長調旋律をチェロが dolce、再陳で Vn が6度上に加わる。 m.32旋律が B 上で宙づり、チェロ三連符の減七アルペッジョが未解決のまま漂う。 → 聴取:温かなハ長調へ開ける。和声が解決せず留まる浮遊感 |
| A主題 a′(管楽器へ) | m.41 | c moll→as moll | ハ短調の完全終止(m.49) | Fl/Ob/Hn | 主題回帰、今度はフルート・オーボエ・ホルンのユニゾン。 m.49ハ短調で完全終止したのち、予想外の変イ短調和音(拍節ずらし)でトリオへ突入。 → 聴取:主題が管楽器のユニゾンで戻る。最後の暗い和音がトリオへ続く |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 担い手 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| トリオ c | m.54 | as moll/dur | 半終止(m.58) | Ww/Vc | 全体が拍節的に転位(上拍が下拍に)、木管が変イ短調/長調和音を交替、シンコペのチェロが下降4度。 m.58チェロが D♭ で2オクターヴ跳躍。 → 聴取:拍の位置がずれて足元が不安定になる。木管の和音の揺らぎ |
| トリオ d(弦のみ) | m.70 | H dur | – | 弦 | 全木管が退場し、弦のみが表情豊かな揺れる旋律。頂点でバスが初めて弓奏する。 m.79変イ長調へ帰り(短3度下)、ここでの音量は増大でなく後退。 → 聴取:弦だけが咲く中間部。低音が初めて弓で歌い、厚みが増す |
| 再移行(循環の予兆) | m.93 | as→b→c moll | – | Cl/Bsn/Hn | m.93:クラリネット+ファゴットが A 主題の最初の3音を忍ばせ(変イ短調)、変ロ短調へ上昇。 m.97フルート/オーボエの3音図形、ホルンが C 音で入り再現を準備する。 → 聴取:間奏曲の主題が管楽器にそっと戻る。ホルンの C が再現の合図 |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 担い手 | 内容・差異(対 A部) |
|---|---|---|---|---|---|
| A主題 a(ホルン独奏) | m.99 | c moll | 半終止(m.107) | Hn solo | 音色が鮮やかに変わる。主題がチェロでなくホルン独奏に、フルートがシンコペの脈を添える。 m.107ホルンの五連符旋回がとりわけ鮮やか。差異:主題の担い手をチェロ→ホルン独奏に変更。音色が一変する |
| A主題 a 反復(オーボエ) | m.111 | c moll | – | Ob | オーボエが旋律を担う(A 部では第1Vn の位置)。差異:第1Vn→オーボエ |
| A主題 b(ファゴット) | m.122 | C dur | – | Bsn | ファゴットが dolce の長調旋律(旧チェロ線)、上声はクラリネット。差異:チェロ→ファゴット、上声クラ |
| A主題 a′(豊かに) | m.139 | c moll | ハ短調の完全終止(m.147) | Vn1+Vc | 響きがはるかに厚くなる。旋律を第1Vn+チェロが3オクターヴに展開。 m.147ハ短調で終止し、コーダへ直結。差異:3オクターヴに拡張、管の再配置。主題が満ち足りて戻る |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 担い手 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| コーダ(静かに消える) | m.150 | c moll | ハ短調の終止(m.159) | tutti→pizz | m.150:拍節をずらした保持和音がトリオ導入を想起させるが、トリオでなく主題材料がハ短調終止へ解決する。 m.159穏やかな3和音下降、最終ハ短調和音を2小節以上保持、3/8 の脈をピチカートが回復して消える。 → 聴取:トリオの和音が戻りかけるが、主題が引き戻す。最後はピチカートの静かなハ短調へ |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1主題 P | m.1 | f moll | – | P | 全弦+ファゴットのユニゾン sotto voce、不気味で嵐めいた長短短リズムと下降旋回。主題は属音 C から始まり、導音 B♮ がそれを際立たせて、両内楽章でためた属の緊張をそのまま引き継ぐ(Frisch)。 m.9フルート/クラ/ファゴットが3度6度で和声化(mezza voce)、A♭ の保持が D♭–G♭(♭VI・ナポリ)の色を帯びて5小節に伸長。 → 聴取:静かなのに張り詰めたユニゾンの出発。低く渦巻く主題を覚えておく |
| 挿入句(循環の予示) | m.19 | des moll→Des dur | – | 第2楽章コラール | トロンボーンが突入し、第2楽章の第2主題(コラール)が初めて終楽章に現れる——第2楽章再現部で省かれた、あの主題。 m.23トロンボーンがふくらみ、前楽章から差し込まれた奇妙な中断を閉じる。 → 聴取:緩徐楽章から借りた静かな主題が、嵐の中に割り込む。循環の最初の予告 |
| 移行部 Tr | m.30 | f→c moll | – | Tr | 全合奏の C 上の上拍下拍図形、ティンパニ・ロール。 m.42半音上行+シンコペ、ハ短調の嘆くような下降を管弦が交替で投げ合う。 → 聴取:叩きつける身振りと、嘆くような下降の応酬 |
| 第2主題 S | m.52 | C dur | – | S | 英雄的な三連符の行進旋律(チェロ/ホルン)が属 G へ強く牽引。 m.56第1Vn+木管に主題、行進するピチカート低弦、ホ短調へ降下。 m.66パターンを反復し終結主題のため変ホを準備。 → 聴取:自信に満ちた英雄的主題が長調で現れる。暗い出発から一転して |
| 終結群 K | m.75 | c→h moll | – | K | m.70:全合奏(トロンボーン・ティンパニ)が変イ長調を強奏し急降下。 m.75第2主題の劇的な短調続編、フルートの叩くシンコペ。 m.87最弱拍を強調する上向図形、ジグザグに折れる中断が遠隔のロ短調へ。 m.102主題冒頭断片が Vn/ヴィオラでヘ短調へ、ピチカートが再現を導く。 → 聴取:英雄性が緊迫した短調へ翳る。上へもがいて遠い調へ転ぶ |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容・変容・差異 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1主題再現(展開部より前) | m.108 | f moll | – | P' | ユニゾンが今度は木管+ピチカートのユニゾン弦で、2小節延長。 m.120オーボエ+ファゴットが冒頭句を受け持ち、胸を打つように主題が薄く引き伸ばされる。差異:展開に入る前に、淡い木管+ピチカートで第1主題が戻る(展開部前の主題再現) |
| 展開(主題労作) | m.134 | as→b→c | – | P断片 | m.134:Vn が測定トレモロで主題、低 E♭ ペダル上、4小節句を8小節に伸長。 m.142突然の強烈な噴出、下降旋回を急速上行ゼクエンツに、管↔低弦↔ホルンで主題を投げ合う。 → 聴取:深いペダルの上を漂う遠い主題。そこから動機が上へ放り投げられる爆発へ |
| 第2楽章コラール回帰(循環頂点) | m.149 | a moll→F dur | – | 第2楽章コラール | きわめて劇的なゲネラルパウゼの後、第2楽章のコラール主題が壮大な変容(apotheosis)として金管/木管/バスで噴出、弦が三連符で渦巻く。Frisch はこれを木管・金管のカノンと見て、ハ短調(m.155)→嬰ハ/変ニ短調(m.159)→ホ短調(m.163)と半音ずつ迫り上がると記す。 m.167故郷ヘ=今や長調へ到達(6-4和音の上で A♮ が凱旋する)。A♭ 対 A♮/ヘ短調 対 ヘ長調の緊張が、ここでヘ長調へ決定的に傾いたかに見える。だが直後に A♭ が回帰し、その勝利は断ち切られる。 → 聴取:衝撃の沈黙のあと、緩徐楽章の主題が燃え上がる。ヘ長調の勝利が、すぐに奪われる |
| 移行部再現 | m.172 | f moll | – | Tr' | 第2楽章主題は既に成就済みのため、ここでは挿入句(m.19)が再現されない。熱に浮かされたように力強く変容する。 m.184m.42 に対応するが4度上、嘆くような下降が今度はヘ短調で。差異:提示部の挿入句(緩徐楽章主題)を再現しない。役割が反転して激しさを増す |
| 第2主題再現 | m.194 | F dur | – | S' | 第2主題が主調の長調で(m.52 に酷似、同編成)。差異:属調ハ長調(提示部)→主調ヘ長調へ「解決」。英雄的主題が故郷の長調で輝く |
| 終結群再現 | m.217 | f moll→h moll | – | K' | m.212:「強奏」和音が今度は変ニ上、ヘ短調へ急降下。 m.217終結主題がヘ短調に移調して戻る。 m.238行進する低音が主題の最初の3小節そのもの(原調)に置換=きわめて巧みな変奏だ。 m.244動機が減速し、半音上のロ短調へねじれてコーダを開く。差異:ハ短調→ヘ短調。低音が主題自身に置換される |
| 区分 | 小節 | 調性 | 終止 | 主題 | 内容 |
|---|---|---|---|---|---|
| コーダ開始(遠隔調) | m.252 | h moll→f moll | – | P(新版) | ヴィオラが全く新しい、緩い三連符変容の主題を開始(コーダの起点としては異例の遠隔調)。 m.260ティンパニ・ロール、m.9 の引き伸ばされた主題の、囁くような上行アルペッジョが回帰。 → 聴取:静まり返った主題の新しい姿。遠い調で。冒頭の囁くアルペッジョが戻る |
| 長調への変容+モットー回帰 | m.267 | F dur | – | Motto | 楽章と交響曲の鍵となる瞬間。Un poco sostenuto、オーボエが倍音価(拡大)で主題、ホルンが温かく気高い和声を添える。Frisch によれば、この指示はコーダの2分音符を第1楽章の付点2分音符に等しくし、第1楽章のテンポをそっと呼び戻す。 m.271オーボエが第1楽章の4音版モットーを B♭ 上で奏す。 m.275ホルンがモットーを反復、トロンボーンが荘厳に加わる。 → 聴取:短調が静かにヘ長調へ溶ける。第1楽章のモットーがオーボエとホルンで還ってくる |
| 第2楽章コラール(終楽章3度目) | m.280 | F dur | – | 第2楽章コラール | 木管/金管が第2楽章のコラール主題をヘ長調で、上拍下拍和音が低弦と交替。 m.288ひときわ温かく情のこもった第2陳述となり、F への終止で、実り豊かなこの主題に別れを告げる。 → 聴取:緩徐楽章のコラールが、最後はおだやかな長調で安らぐ |
| 第1楽章主題回帰(終結) | m.297 | F dur | 最終終止 | Motto / 第1楽章P | m.297:チェロ/ファゴットが終楽章冒頭旋回、フルート/オーボエ/ホルンが原形の全音符モットーを F・A♭ 上・原和声のまま(交響曲の冒頭そのものへ遡る)。 m.301第1楽章の主主題が回帰——まさに変容(transfiguration)と呼ぶほかない。輝くトレモロ上に主題、第2音を小節線越しに保持(第1楽章の 3/2 の含意)。 m.305トレモロの下降が静まり、低 F のティンパニ・ロールを2小節保持、ピチカート、最終小節に保持和音。4楽章すべてが静かに終わる——この曲が他の終わり方をするとは考えにくい。 → 聴取:全曲の冒頭の身振りが変容して還る。第1楽章の主題が漂い、低い太鼓のFで交響曲が静かに閉じる |