| 楽章 | 形式 | 主調 | 特記 | 形式上の変型 | 聴きどころ |
|---|---|---|---|---|---|
| I. Langsam – Allegro | ソナタ形式(緩序奏つき) | h→e | テノールホルン独奏で開始 | 展開部・再現部の境界が分析者で割れる | 低く吼えるテノールホルンの序奏主題が楽章の種。展開部が巨大で、行進主題が荘厳なコラールへ変容する。 |
| II. Nachtmusik I | 対称的ロンド | C/c | 夜のさすらい(《夜警》に喩える) | 主題が鏡像的に逆順で回帰 | 2本のホルンの遠近をつけた呼び交わし、「鳥の声のように」集まる木管、遠くのカウベル。長短が数拍ごとに揺れる。 |
| III. Scherzo: Schattenhaft | スケルツォ=トリオ | d(ニ長/短) | 「影のように」グロテスク | 再現で主題を再示せず同時に積層 | ティンパニとピチカートの不気味な対話で開始。ウィンナ・ワルツの病的な戯画。低弦に fffff「弦が指板を打つほど」の指示。 |
| IV. Nachtmusik II | セレナード(A–A′–B–A′) | F dur | ギター・マンドリン/室内楽編成 | 金管の大半が沈黙する「室内楽の島」 | 独奏ヴァイオリンのグリッサンド、ギターとマンドリンの爪弾きの上を独奏ホルンが甘く歌う、巨大編成中の親密なセレナード。 |
| V. Rondo-Finale | ロンド+8変奏(+大コーダ) | C dur | 祝祭のハ長調・引用の織物 | 第1楽章主題が回帰する循環 | ティンパニの強奏で夜が明ける。マイスタージンガーやメリー・ウィドウの引喩がコラージュ風に交錯。最後は和音が一瞬翳ってから fff のハ長調で断ち切る。 |
| 区分 | 小節/番号 | 調 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 序奏主題(テノールホルン) | m.1 / №1 | h moll | 序奏 I | 付加6度和音上の緩い行進リズムに乗り、テノールホルン独奏が属音主題を吼えるように歌う。m.2 の付点リズム動機が、のちに m.45 で「連続完全4度」の動機へ変容する——この4度がこの曲の“モダンな響き”の核(Wu/Revers)。 → 聴取:いちばん最初の独奏=低く吼える金管的な音。これが楽章全体の種。付点のリズムを覚える |
| 序奏の移行・アリオーソ | m.19 / №3 m.27 / №3 |
h→es | I′ | m.19:やや速度を上げるが「常に非常に厳粛に」、行進歩調が立ち上がる。m.27:変ホ短調で歌うようなアリオーソ(Nicht schleppen)、後の主題Aを予示する。 → 聴取:厳かな行進が立ち上がり、ふっと歌に変わる |
| 区分 | 小節/番号 | 調 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 主主題 A | m.50 / №6 | e moll | A | Allegro con fuoco。疾走する主主題が一気に立ち上がる(テノールホルンは m.36 以降いったん沈黙)。m.80:変ロ長調で主題の変形 A′。 → 聴取:序奏の重さから一転、火のように疾駆する。ここがソナタ主部の出発 |
| 第2主題 B | m.118 / №14 | C dur | B | a tempo(sempre l'istesso)。より広く穏やかな、弦がスイープする抒情主題。m.134:終結主題 C(序奏 I′ 由来)が a tempo Allegro で割り込み、B 主題を未完のまま中断する。 → 聴取:弦の大きく息づく歌。すぐに荒々しいエピソードが横入りする落差 |
| 区分 | 小節/番号 | 調 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 展開部 開始(La Grange) | m.145 / №18 | e–h–e | A,A′ | Tempo I。提示部素材の変形再示。La Grange はここを展開部の開始とする。m.174:ニ長→ロ短で序奏動機 I と A′ が結合。 → 聴取:主題が形を変えて舞い戻る。序奏の動機と主主題が絡みはじめる |
| A の反行(Floros の展開部開始) | m.186 / №22 | →H dur | A′+I | A の反行形が現れる。Floros はここを展開部の開始とする。m.196:Moderato、序奏の閉じ動機(m.17–18)が回帰し、テノールホルンが復帰(m.193)。 → 聴取:主題が「逆さま」に流れる。低く吼える序奏の楽器がここで戻ってくる |
| 宗教的幻影(コラール+《Urlicht》回想) | m.256 / №31 m.298 / №37 |
Es dur | コラール | m.245:pp のトランペット信号(ファンファーレ)。m.256:Meno mosso、行進主題が荘厳なコラールに変容し、第2番《Urlicht》を回想する(Floros)。m.266:subito Allegro、独奏ヴァイオリンの挿話(ト長/短)。m.298:再びコラールとファンファーレ。 → 聴取:行進が突然、教会の合唱のように荘厳化する。展開部中央の精神的な高み |
| ロ長調の頂点(楽章の中心) | m.317 / №39 m.328 / №41 |
H dur | 全主題 | Sehr breit。全主題が長調に染まる(序奏主題 I も長調になる=終楽章以外で唯一)。m.328 から高揚し、m.335 で頂点、強い V–I 終止に達する(Floros の言う「楽章の中心、ロ長調」)。 → 聴取:すべてが明るく一つに溶ける、安定したロ長調の絶頂 |
| 序奏の荘厳な回帰(境界の急所) | m.338 / №42 | h moll | 序奏 I | Adagio(序奏のテンポ)。葬送行進のリズムとトロンボーン独奏で、序奏主題 I が荘厳に回帰する。急所:Floros はここを「再現部開始」とする。La Grange はなお「序奏再現=移行」と読む(→特異点) → 聴取:冒頭の重い世界が荘厳に戻る。ここを再現の開始と聴くか、まだ展開の続きと聴くかで楽章の見取り図が変わる |
| 区分 | 小節/番号 | 調 | 主題 | 内容・変容・提示部との差異 |
|---|---|---|---|---|
| 主主題 A 再現 | m.373 / №46 | e moll | A | Allegro come prima。La Grange の読む真の再現部開始。差異:提示部より激しく、塑性的な三連音をまとい、♭IV–I の変格終止で導き入れられる → 聴取:火の主題が、より分厚く戻ってくる |
| 第2主題 B 再現 | m.465 / №57 | G dur | B | m.427:A′ がロ長調で(提示部 m.80 は変ロ長調)。m.465:第2主題 B がト長調で再現。m.487:終結主題 C(Frisch)。差異:第2主題は提示部のハ長調(m.118)→再現はト長調。提示部とは別の調で「解決」する → 聴取:あの広い抒情主題が、別の調の光で戻る |
| 区分 | 小節/番号 | 調 | 主題 | 内容 |
|---|---|---|---|---|
| コーダ | m.495 / №61 m.523 / №65 |
e moll | 行進リズム | m.495:Nicht eilen!(急がずに)。m.523:Tempo I(Allegro)で行進リズムの壮大なコーダ——La Grange はコーダを m.495 から、Floros は m.523 からとする。楽章はホ長調和音で閉じる。 → 聴取:行進が壮麗に束ねられて楽章を閉じる |
| 区分 | 調 | 主題・動機 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|
| 序奏 (I) | C↔c | ホルンの呼び交わし | 2本のホルンが応答し合い、第2ホルンは弱音器で「遠さ」を演出。木管が「鳥の声のように(wie Vogelstimmen)」集まる。 → 聴取:遠近をつけたホルンの掛け合いと、グロテスクな鳥のさえずり。夜の散歩が始まる |
| 主題 A(行進) | C dur | 牧歌主題+《Revelge》 | 豊かで田園的なホルンの主題。歌曲《Revelge》由来の行進リズムに乗り、伴奏は col legno(弓の木で弦を打つ)。 → 聴取:col legno のカサカサした行進。素朴で牧歌的な歌 |
| 主題 B(舞曲) | (調は未確認) | 素朴な舞曲 | 優しく無邪気な田園的舞曲。 → 聴取:肩の力の抜けた舞曲。場面が和らぐ |
| 中心部 C(中央) | (調は未確認) | 長短モットー | 「意地悪な」性格の中間部。《Revelge》のリズムと鳥の声で装飾され、第6番由来の長短(major-minor)動機が顔を出す。 → 聴取:鏡の中心。不気味に彩られ、長調と短調が入れ替わる |
| 逆順の回帰(I/A–B–A–I) | →C | 諸主題+カウベル | 中心を過ぎると主題が逆順で戻る。回帰部では遠くのカウベルが夜の気配を添え、鳥の声が長短モットーとともに消えていく。 → 聴取:来た道を鏡のように戻る。遠いカウベルと、消えゆく小鳥の声でフェードアウト |
| 区分 | 位置※ | 調 | 主題・動機 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 導入 | m.1–12 | d moll | ティンパニ+pizz | ティンパニと pizzicato 低弦の対話。半音(B♭–A)の「種」から12小節かけて素材を蓄積し、皮肉な木管が合いの手を入れる。 → 聴取:pp のティンパニとピチカートの不気味な問答。何かが忍び寄る気配 |
| スケルツォ主部 | m.13〜 | d moll | 威嚇的ワルツ | 「威嚇的なワルツ」主題と、木管の「嘆き(klagend)」動機。幽霊的・グロテスクで、木管が金切り声をあげ、低弦が不気味に揺れる。主題は特定の楽器に固定されず、オーケストラ中を巡る。 → 聴取:渦巻く三連音と、突き刺すような木管。踊りが亡霊のように歪む |
| トリオ | m.179〜 | 長調 | 反行・第3番引用 | スケルツォ主題(m.38 の木管)を長調・反行で改作。オーボエの二重奏(dolce espressivo)で開始し、呼び交わし(m.210–243)を経て、m.246 でホルン・チェロがマーラー第3番を引用する。 → 聴取:一瞬の暖かい長調。独奏ヴィオラが舞い、束の間の田園が開ける |
| スケルツォ再現+コーダ | m.293〜/終結 m.408 | d moll | 主題の積層 | 拡大した導入から再現へ。諸主題を単純に再示せず同時に積層してパロディ化する。終結は snap pizzicato(m.408)。 → 聴取:主題が重なり合い、夢のように出没してフェードアウトする |
| 区分 | 調 | 主題・動機 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|
| セレナード提示 A | F dur | ホルン旋律 | 独奏ヴァイオリンのグリッサンドで開始。ハープ・ギター・マンドリンの撥弦の上に、独奏ホルンが "zart hervortretend"(やわらかく前へ)と甘く歌い、セレナードの気分を確立する。 → 聴取:ギターとマンドリンの爪弾き。巨大なオーケストラが急に親密な小編成に縮む驚き |
| 展開 A′ | F→短調側 | 主題の断片化 | 主題素材が断片化し、マンドリンの音色が前に出て短調へ陰る。"graziosissimo" の優美な短い間奏(Mahler Foundation)。 → 聴取:楽器の組み合わせが刻々と変わる。木管に鳥の声めいた身振り |
| トリオ B(中央) | (F以外、調は未確認) | 独奏Hn+Vc | 独奏ホルンとチェロによる、息の長い「広い下行主題」。中央部はやや劇的に高まる。 → 聴取:独奏チェロとホルンが寄り添う、深く歌う旋律 |
| セレナード回帰/コーダ A′ | F dur | 冒頭素材の変奏 | 冒頭素材が変奏されて戻り、短く劇的強度まで高まったのち、鳥の声と撥弦の和音へ収束する。終末は透明な静けさで、フィナーレ突入への静かな背景となる(Wikipedia)。 → 聴取:最後は爪弾きと小鳥のさえずりで消えるように閉じる。次の楽章の唐突な爆発への“間” |
| 区分 | 調 | 主題・動機 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|
| リフレイン A(行進) | C dur | マイスタージンガー引喩 | Tempo I(Allegro ordinario)。ティンパニの強打と輝く金管のコラールで夜が明ける。①トランペットのコラール②ホルンによるワーグナー《マイスタージンガー》行進曲の引喩③活発なヴァイオリンの変形。気高いはずの行進が "disingenuously pompous(もったいぶった大仰さ)" に変質する(USUO)。 → 聴取:冒頭のティンパニ強打と金管のコラール。荘厳なはずの行進がどこか滑稽にずれる |
| エピソード(牧歌/オペレッタ) | C圏/D系 | メリー・ウィドウ引喩 | オーボエの二重奏による牧歌的挿話。続いて レハール《メリー・ウィドウ》のワルツの引喩を二倍速で、USUO の言う「ハイドン風メヌエット」(ニ長調・複合拍子)として。三拍子と二拍子の混乱が続く。 → 聴取:ウィンナ・ワルツめいた節が、行進のテンポに無理やり押し込まれる可笑しみ |
| 変奏・展開の交替 | 転調多数 | 各主題の重ね合わせ | 各主題が変奏・重畳される。USUO は《トリスタン》第1幕終結の金管の身振りの模倣→ハ長調から急に変ト/A♭和音へ転じて英雄性を覆す、と指摘する(USUO 単独の読み)。テンポと拍子が頻繁に変わる「ポストモダンのコラージュ」。 → 聴取:祝祭が何度も腰を折られる。引用とパロディが次々に横切る |
| 第1楽章主題の回帰(循環) | 短調→長調 | 第1楽章 主主題 | 第1楽章の主主題が回帰し、肥大したワーグナー風の行進主題に重ね合わされる。「猛烈に華やいだフィナーレの只中に現れ、すぐ鎮められて長調で再来する」(Wikipedia)。第4楽章の "twinkle" 句も再帰する(USUO)。 → 聴取:序盤の暗い主題がふいに顔を出し、押し返される。全曲が円環を閉じる瞬間 |
| コーダ/結尾 | C dur | 和声の地口(pun) | マイスタージンガー句とティンパニ動機が回帰。迷い込んだ G♯(=異名同音の A♭)が和音を長和音から増和音へ変え、音楽が急にピアノへ落ち、そののち fff のハ長調和音で全曲を断ち切る(Wikipedia/USUO)。カウベルとグロッケンシュピールが輝きを添える。 → 聴取:最後の一瞬、和音が翳ってから fff のハ長調で叩き切る。この“地口”が祝祭に小さな影を残す |