| 部 | 内容 | 位置(参照録音) | 調 | 聴きどころ |
|---|---|---|---|---|
| 序:天上のプロローグ | ヨハネの挨拶/主の召命/玉座の礼拝と頌栄/封印された書/子羊の出現 | CD1 0:00〜30:30 | C → D → G | ハ長調の大きなカデンツで挨拶が始まり、四重唱と合唱の「聖なるかな」がニ長調のフーガへ育つ。書が現れると音楽はパッサカリアになり、低弦の同じ主題が半音ずつ上がりながら7回。 |
| 第1部:第1〜第6の封印 | 四騎士(白・赤・黒・青白い馬)/殉教者の合唱/世界の終わり | CD1 30:30〜終(66:53) | 典拠に調名なし | オルガン独奏で始まり、封印がひとつ開くごとに世界が壊れていく。赤い馬では合唱が男声(兵士)と女声(母たち)に割れて罵り合い、最後は半音階だらけの巨大な合唱フーガで第1部が閉じる。 |
| 第2部:第7の封印〜最後の審判 | 天の沈黙/太陽をまとった女と竜/ミカエルの戦い/七つのラッパ/4主題フーガ | CD2 0:00〜32:40 | 典拠に調名なし | ふたたびオルガン独奏をはさみ、28小節の「天の沈黙」が開く。沈黙のなかで語られる竜との戦いが終わると、七つのラッパが順に鳴り、最後は4つの主題が同時に走るフーガ。 |
| 結:新しい天と地〜閉幕挨拶 | 主の声(3回目)/ハレルヤ/男声合唱の感謝/ヨハネの閉幕挨拶 | CD2 32:40〜終(49:35) | A → D →(冒頭) | 主の声がプロローグと同じ音楽で戻り、イ長調に落ち着いてからニ長調のハレルヤへ。その後、器楽を全部引いた男声のユニゾンが来て、最後に冒頭の挨拶がそのまま戻る。 |
| 区分 | 位置 | 調 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| ヨハネの挨拶 Gnade sei mit euch |
冒頭 Moderato · C≈CD1 0:00 | ハ長調 | 挨拶 | 4小節の器楽の前置きのあと、5小節目でヨハネ(ヘルデンテノール)がひとりで歌い出す(実測)。この区分全体がハ長調の大きなカデンツで、冒頭の1小節のホルン動機が最初の7小節のうちに7回繰り返される——聖数7がここで最初に鳴る(Hrdlicka)。ピアノ縮約では f marcato の4分音符が順次上行する形で書かれている(実測)。 → 聴取:この挨拶の音楽をまず耳に入れておく。約2時間後、同じものが最後にそのまま戻ってくる。7という数は以後、書の主題の7回、封印7つ、ラッパ7つと形を変えて出続ける。 |
| 器楽の間奏 | [4]–[5] Andante · 3/4≈CD1 3:20 | 流動的 | — | ヨハネの「アーメン」のあと、拍子が 3/4 に変わって短い器楽の間奏が入る(実測)。Hrdlicka はこの3拍子を三位一体の象徴と読む。次の主の声を導くのは7小節のティンパニのトレモロ(Hrdlicka)。 → 聴取:拍子が3つになった瞬間が、人間の声から神の声へ移る境目。 |
| 主の声(1回目) Ich bin das A und das O |
[7]≈CD1 3:20 内 | 流動的 | 主の声 | 低いバスが「わたしはアルファでありオメガである」と歌う(実測:Die Stimme des Herrn (Baß))。[9] のあと Un poco lento・4/4 に変わって「Komm her!(昇って来い)」(実測)。ヨハネの部分と主の声の部分は書法が似ていて、厳格な全音階、大きな跳躍を避け、2度を好み、和声関係が明快——これが Hrdlicka の言う「善なるものの世界」の語法で、のちの騎士や災厄の場面と正面から対になる。 → 聴取:主の声は全曲で3回しか出てこない(作曲者自身の弁)。1回目はここ、2回目は第5の封印のあと、3回目は終盤の「新しい天と地」。 |
| ヨハネの昇天 Und eine Tür ward aufgetan im Himmel |
[11] の後(Vivace)≈CD1 6:30 | 流動的 | — | Vivace の器楽が走り出し、そこへヨハネが「天に一つの門が開かれた」と入る(実測)。Hrdlicka はこの短いフガートをヨハネが天へ昇っていく描写とする。[12] で Tranquillo になり「Und siehe, ein Thron(見よ、玉座が)」——この箇所はもう、次に来る頌栄のフーガ主題に支配されている(Hrdlicka)。 → 聴取:「玉座が見えた」と歌っている時点で、まだ始まっていないフーガの主題がすでに鳴っている。音楽が筋を先回りする、この作品の癖がここで初めて出る。 |
| 聖なるかな(独唱四重唱) Heilig, heilig ist Gott der Allmächtige |
[21](rit. → Tranquillo)≈CD1 11:10 | ニ長調 | 聖なるかな | 独唱四重唱のテノールが dolce で主題を出し、以下ソプラノ・アルト・バスが模倣的に積み上がる(実測)。文献ではこの部分と直前の「Und siehe, ein Thron」を合わせて「ニ長調の前奏曲とフーガ」と呼ぶ(Hrdlicka)。静かに流れる主題は変形しながら高まり、「アーメン」に至る(同)。 表記の異同:楽譜の歌詞は heilig が2回で、3回ではない(実測。CD のトラック表記も盤により「Heilig, heilig」と「Heilig, heilig, heilig」で揺れる)。 → 聴取:ここが作品で最初に「長調の名前を持つ」場所。独唱四重唱→男声合唱([26]・3拍子)→四重唱と合唱の合流([30])と層が増えていく積み上げを追うと、フーガの育ち方が見える。 |
| 封印された書(パッサカリア) Und ich sah in der rechten Hand |
p.25 冒頭([32] の直前)3/4≈CD1 17:10 | 上行しつづける | 書 | ヨハネが「玉座に座す方の右の手に、一巻の書を見た」と語ると「書の主題」が現れる。これは低音の固執反復によるパッサカリア(バロックの舞曲形式)で、主題はつねに pp のまま、半音ずつ高くなりながら7回鳴る。最初はコントラバス、最後はファゴットと低弦(Hrdlicka)。 → 聴取:音量は変わらないのに、同じ音型が半音ずつせり上がるだけで息が詰まっていく。この主題は第1部の頭と最後の審判でまた出てくるので、いま覚えておくと後で二度得をする。 |
| 天使の問い Wer ist würdig …? |
[35] テノール独唱[36] ソプラノ独唱・[37] 四重唱 | 流動的 | 書(転回形) | ひとりの天使(テノール独唱)が「誰がこの書を受け取り、封印を解くにふさわしいか」と問い、ソプラノ独唱、続いて独唱四重唱がそれを重ねる(実測)。この問いへの答えとして、書の主題が初めて上下逆さまの形(転回形)で現れる——子羊が封印を解くことを、音楽が言葉より先に告げてしまう(Hrdlicka)。[41] Più lento でヨハネが「天にも地にも、書を開ける者はいなかった」と告げる(実測)。 → 聴取:「誰もいない」と歌詞が言っている裏で、主題がひっくり返って「もういる」と答えている。 |
| 子羊の出現 Nun sah ich, und siehe, mitten vor dem Throne |
[43] Andante un poco lento[44] ヨハネ≈CD1 23:30 | ト長調 | 子羊 | 救い主の出現は、飾りのないト長調とオーボエ——牧人の楽器——のカンティレーナで告げられる(Hrdlicka)。ヨハネの報告に [46] から合唱が pp で「O sehet!(ご覧なさい)」と割り込みはじめ、以後、語りと合唱が交互になる(実測)。 → 聴取:ここまでの半音階と緊張のあとで、突然なんの飾りもない長三和音が鳴る。そのオーボエの旋律は、第2部で「太陽をまとった女」がマリアとして歌われるときに戻ってくる。 |
| 子羊が書を受け取る・頌栄 | [51]〜[55] (Orgel)[56] Maestoso · 3/2 | 流動的 | 子羊 | [54] で子羊が書を受け取り、四つの生き物と長老たちがひれ伏す。[55] の直前 Più lento に (Orgel) の指定が現れる——オルガンの初登場で、ヨハネが「竪琴と、香に満ちた金の鉢」と歌う場面の持続和音(実測+Hrdlicka)。[56] Maestoso・3/2 から合唱の頌栄が始まり、[57] Vivace(3/4)と [58]/[60] Maestoso(3/2)が交替して [61] の「アーメン」へ(実測)。この交替については楽譜に脚注があり、4分音符の速さは最後まで意味の上では同じに保つが、正確さにこだわって硬直させるな、と指示されている(実測)。 → 聴取:オルガンが初めて入る瞬間を待つ。ここから終曲まで、オルガンは管弦楽の一部ではなく別格の音体として扱われる。 |
| 区分 | 位置 | 調 | 担当 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| オルガン独奏(第1の間奏曲) | p.45 Lento · 3/4(Orgel)≈CD1 30:30 | — | オルガン | 声が完全に止まり、オルガンだけの間奏になる(実測:p.45 に (Orgel) の指定、リハーサル番号は振られていない)。最初の28小節はプロローグのパッサカリアと厳密に同じで、書の主題がふたたび7回鳴る(Hrdlicka)。 → 聴取:いま聴いたばかりの音楽が、楽器だけで、しかもオルガンで戻ってくる。この作品でオルガンが単独で担う2つの楽章のひとつ(もうひとつは第2部の頭)。のちに《2つのオルガン間奏曲》として単独出版された。 |
| 第1の封印 白い馬 Und als das Lamm der Siegel erstes auftat |
[62] Più mosso · C≈CD1 33:40 | ヨハネ+混声合唱 | 白い騎手 | 低弦の付点音型が駆けてくる馬を描く(Hrdlicka)。合唱が「Komm! Komm!(来たれ)」と呼び、[65] から厳格なホモフォニーで「Der Herr! Der König der Könige!(主よ、王の王よ)」と主の姿を描く(実測+Hrdlicka)。シュミットはこの白い騎手をキリストと解した(Hrdlicka)——黙示録の四騎士の一人目を災厄でなく救いと読む立場。 → 聴取:四騎士のうち、ここだけが輝かしい。合唱が縦に揃って和音で歌う書き方は、このあと三つの封印では二度と戻ってこない。この音楽は第2部で白い騎手が再登場するときにまた鳴る。 |
| 第2の封印 赤い馬(戦争) Und als das Lamm der Siegel zweites auftat |
[70] Meno mosso→ Alla marcia≈CD1 36:10 | ヨハネ+男声合唱/女声合唱 | — | 行進曲で始まる(実測:[70] のすぐ後に Alla marcia、同時に調号が消える)。Hrdlicka はこの区分をまるごと「戦争」と題しうる巨大な音画と呼び、ティンパニ・小太鼓・大太鼓・タムタムという打楽器の総動員がそれを支えるとする。合唱が二群に割れる——[73] から男声(テノール2部+バス2部)が「Tötet, erwürget, erschlaget den Feind!(殺せ、絞めろ、討ち取れ)」、[74] から女声が「Schonet uns … wir sind Mütter!(助けて、私たちは母です)」(実測)。以後 [75]〜[79] まで両群が交替し、重なり合う。最後は pp に消えていく(Hrdlicka)。 → 聴取:この作品でいちばん耳に残るのは、たぶんここの男声と女声の掛け合い。兵士側の言葉が段階的に残虐になり(「母の胎の子も容赦するな」)、女声はそれに対して同じ懇願を繰り返す。1937年に書かれた音楽であることを思うと、聴き方が変わる。 |
| 第3の封印 黒い馬(飢餓) Und als das Lamm der Siegel drittes auftat |
p.71([81] の後)· 3/4[83] バス独唱≈CD1 43:30 | バス独唱/ソプラノ・アルト独唱の二重唱/女声合唱 | — | [82] Vivace のあと Lento になり、[83] Più Lento で黒い騎手(バス独唱)が秤を手に「小麦ひと升、大麦三升」と値を告げる(実測)。続いて [85] でソプラノ独唱が子として「Mutter, ach Mutter!(お母さん)」、アルト独唱が母として応じ、飢えを嘆く二重唱になる(実測)。この二重唱で二人は同じ旋律を、原形と転回形で歌う。主旋律が絶えず一方から他方へ跳び移り、それでいて隙間ができない——バッハの受難曲や《ロ短調ミサ》の二重唱と同じ書き方だと Hrdlicka は言う。[88] の女声四部合唱「Schwestern und Kinder! Seid standhaft im Leiden!(姉妹たちよ、子らよ、耐えなさい)」がコラール風にこの場面を閉じる(実測+Hrdlicka)。 → 聴取:母と娘が同じ旋律を上下逆に歌っている、と知って聴くと二重唱の絡み方が全部見える。直前の戦争の場面と対照的に、ここは短調で、編成もぐっと薄い。 |
| 第4の封印 青白い馬(死) Und als das Lamm der Siegel viertes auftat |
[89] Largo · C[90] 独唱二重唱≈CD1 47:50 | ヨハネ/テノール独唱+バス独唱 | — | 骨の指で死の太鼓を打つ死神を、弦の col legno(弓の木の背で弦を叩く)とシロフォン・シンバルが描く(Hrdlicka)。女声の抒情的な二重唱への釣り合いとして、ここはテノールとバスの二重唱が置かれる——シュミット自身の言葉で「屍の野に残された二人の生存者」(Hrdlicka の引く表現)。この場面の土台には弱音器を付けたトロンボーン3本とテューバの4声部が敷かれる(同)。[94] Meno largo に (Orgel) pp の指定があり、二人が「最後まで耐え忍ぶ者は救われる」と歌う(実測)。 → 聴取:音程よりも「音色そのもの」で書かれている場面。Sinkovicz はここを、のちのリゲティやツェルハの音響作曲に通じる領域への踏み込みと見る。四騎士は白=合唱、赤=男声対女声、黒=女声二重唱、青白=男声二重唱と、声の編成そのものが四段の性格分けになっている。 |
| 第5の封印 殉教者の合唱 Herr, du heiliger und wahrhaftiger |
[95] Andante(告知)[96] Allegro ma non troppo · 6/8 · (Orgel)≈CD1 52:00 / 53:00 | ヨハネ/混声合唱 | — | [95] でヨハネが祭壇の下の殉教者の魂を語り、[96] で合唱が「主よ、聖にして真実なる方よ、いつまで裁かずにおられるのか」と入る(実測)。Hrdlicka はこれを3部構成の大規模な合唱フーガとし、殉教者の憤りを描くオルガンの音階がそれに伴うとする。実測では [96] に (Orgel)、[98] に (Org. u. Orch.) の指定があり、[98] でテノール、続いてアルト、[99] でソプラノと主題が段階的に積み上がる。異同:楽譜には「Fuga」の語は印字されていない(実測)。フーガと呼ぶのは Hrdlicka の記述による。 → 聴取:オルガンが駆け上がる音階を弾いているのが、殉教者の怒りにあたる。6/8 の躍動する拍子で怒りを書いたところが独特で、悲嘆ではなく訴えとして鳴る。 |
| 主の声(2回目) Und es wurde ihnen einem jeglichen gegeben |
p.93([108] の後)Andante sostenuto · C[109] Tranquillo≈CD1 56:20 | ヨハネ/主の声(バス) | 主の声 | 殉教者に白い衣が与えられ、[109] Tranquillo で主の声が2度目に現れて「Ruhet noch und wartet eine kleine Weile(今しばらく休んで待て)」と告げる(実測)。1回目と同じく静けさと希望をもたらす——ただし Hrdlicka はこれを嵐の前の静けさと呼ぶ。シュミット自身は覚え書きで、主の声の2回目の役目を「天における騒擾の鎮め」と書いている。 → 聴取:約2時間のうち、ここが最も静かな数分。直後に来るものの大きさが、この静けさで測れる。 |
| 第6の封印 世界の終わり Und ich sah, daß das Lamm der Siegel sechstes auftat |
p.95([111] の後)[112] Allegro molto · 3/4≈CD1 59:00 | ヨハネ/混声合唱 | — | 第6の封印は混沌を呼び、五つの天変地異——地震・月食・嵐・雹・洪水——が順に襲う(Hrdlicka)。合唱が [113]「Die Erde wankt!(大地が揺れる)」から順に言葉で描き、管弦楽がそれを音で描く。低弦の半音階の16分音符が地震、管と弦のスタッカートとピッツィカートの交替が星の落下(Hrdlicka)。実測では [116] で合唱がユニゾンの pp に落ちて「O seht, der Mond ist rot … Wie Blut!(見よ、月が赤い……血のように)」、[120] からふたたび ff で嵐に入る。この区分は作品でもっとも鋭い半音階で書かれている(Hrdlicka)。 → 聴取:五つの災厄がひとつずつ名指しで来るので、歌詞が分からなくても数えられる。月が血の色になる箇所だけ音量が落ちるのが不気味。 |
| 半音階の合唱フーガ Es schwillt das Meer und es steiget immer höher |
p.106([125] の後・[126] へ)主題入り:T → A → [126] S → p.107 B | 混声合唱 | 海の主題 | 「海がふくれ上がり、いよいよ高くなる」の語で半音階のフーガが始まる。Hrdlicka はその主題が半音階のすべての音を含むことを挙げ、以後もっとも厳格な書法で導かれる、オラトリオ文献のなかでもっとも大胆で技巧的な合唱フーガのひとつだとする。実測では主題「Es schwillt das Meer …」がテノール→アルト→[126] ソプラノ→バスの順に積み上がり、対主題として「O, welch grauenvolle Finsternis!(なんという恐ろしい闇)」「Rennet und fliehet!(走れ、逃げろ)」が絡む。[135] Poco a poco string. で「Der Tag des Zornes ist da(怒りの日が来た)」、[136] Più allegro「Ihr Berge, fallet über uns!(山よ、我らの上に崩れ落ちよ)」が頂点、[138]「Wer kann da bestehen?(誰が耐えられよう)」から Lento で静まり、第1部が pp のうちに閉じる(実測)。 → 聴取:12の音が全部入った主題を4声で追いかけっこさせる、というのが技術的な見どころ。合唱には相当きつく、管弦楽が同じ線を重ねて支えている。第1部の締めくくりがこの巨大なフーガで、しかも最後は消え入る。 |
| 区分 | 位置 | 調 | 担当 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| オルガン独奏(第2の間奏曲) | p.123 Vivace ma non troppo · 3/4(Orgel)≈CD2 0:00 | — | オルガン | 第1部の巨大な合唱フーガが消えたあと、ふたたびオルガンだけになる(実測:p.123〜125 は声楽なし、リハーサル番号も振られていない)。Hrdlicka によれば、この独奏はいま聴いたばかりの合唱フーガに主題の上で接続し、第7の封印の開封へ橋を渡す。実測では Vivace ma non troppo → Allegro molto moderato(4/4)→ Più allegro と加速し、末尾で rallent. から Lento へ落ちて、そのまま次のページのヨハネにつながる。 → 聴取:2つのオルガン独奏の性格が正反対。第1部の頭は静かなパッサカリアの再現、こちらは速い動きから減速して沈黙へ落ちていく。 |
| 第7の封印と天の沈黙 Nach dem Auftun des siebenten der Siegel |
p.126([139] の直前)Lento≈CD2 3:00 | 流動的 | 沈黙 | 「第七の封印が解かれると、天に大いなる沈黙があった」——この沈黙がまるまる28小節続く。音楽は6度と3度だけでできた動機にすべてを託し、チェロが2度進行で和声を添えるだけ。楽器編成が1小節ごとに変わり、そのぶん音色が絶えず移り変わる(Hrdlicka)。 → 聴取:「何も起きない28小節」が、この作品でいちばん凝った書き方をされている場所。旋律も和声もほとんど動かないので、代わりに音色だけが1小節ごとに入れ替わっていくのが聴こえる。 |
| 太陽をまとった女 Ein Weib, umkleidet mit der Sonne |
[143] Tranquillo · C | 流動的 | ヨハネ | 沈黙のなかで、ヨハネが救済史をいわば括弧に入れて語り出す。太陽をまとい月を踏み、十二の星の冠をかぶった女——弦とイングリッシュホルンの旋律が、精緻に書かれた対位法的な弦の上に立ち上がる(Hrdlicka)。マリアの母性が語られるところで、オーボエがカンティレーナで入る——プロローグの子羊の出現の回想(同)。 → 聴取:オーボエが出てきたら、それはプロローグの子羊の音。約1時間前に一度だけ聴いた音色が、こういう形で戻ってくる。 |
| 竜 | [146] Più tranquillo[149] Allegretto grazioso · 2/4 | 流動的 | ヨハネ | 女の音楽と正面から対をなすのが竜の響きで、トロンボーン・テューバ・コントラファゴットによる不気味な「コラール」がその出現に付き添う(Hrdlicka)。[147] Lento で尾が星を掃き落とし、[149] から竜が女の前に立ちはだかる(実測)。[162] のあと拍子が 6/8 に変わり Vivace で竜が女を追う(実測)。 → 聴取:低い金管とコントラファゴットだけで書かれた「賛美歌」——それが竜の音楽。善の側の語法(全音階・2度中心)と、ここまではっきり書き分けられている。 |
| ミカエルの戦い Im Himmel aber erhob sich ein großer Streit |
[155] Allegro vivace · 3/4≈CD2 12:20 | 流動的 | ヨハネ | ここでシュミットは後期ロマン派の管弦楽の音を全開にする——木管の総奏、ホルン4・トロンボーン3・テューバの分厚い和音が弦の音階の上に積み重なる(Hrdlicka)。戦いの頂点で竜の墜落が聴こえる。ほぼ全楽器の下行する32分音符がそれを描く(同)。 → 聴取:竜が落ちる瞬間は聴き逃しようがない。オーケストラ全体が一斉に音階を駆け下りる。 |
| 白い騎手の再登場 Ich sah den Himmel aufgetan … |
[171] Vivace · C | 流動的 | 白い騎手 | 第1の封印で一度だけ現れた白い騎手が、「王の王」としてふたたび天から現れる(実測)。音楽はここでプロローグ冒頭の箇所へ立ち返る(Hrdlicka)。サタンが決定的に敗れると管弦楽は突然 ff で断ち切られ、緊張をはらんだ全休止のあと、あの沈黙の動機が pp で戻ってくる(同)。 → 聴取:音が全部止まる一瞬(総休止)を待つ。そのあと戻ってくる pp が、28小節の沈黙と同じ動機。 |
| 沈黙の再来・ラッパの準備 Und als die große Stille im Himmel vorüber war |
[176] Lento[177] Poco a poco più mosso・[178] Allegro≈CD2 19:00 | 流動的 | 沈黙 | 沈黙が明け、玉座の前の七人の天使に七つのラッパが与えられる(実測)。天使たちが吹く支度をすると、管楽器に半音階が現れる——これから呼び出される苦しみの象徴(Hrdlicka)。弦は沈黙の動機(6度と3度)を縮小形で処理しつづける(同)。 → 聴取:沈黙の動機が、速く小さくなって弦に潜り込んでいる。ここで挿話が閉じる——沈黙で開き、沈黙で閉じる額縁になっている。 |
| 七つのラッパ(第1〜第4) Die Posaune verkündet großes Wehe |
[179] Allegro, ma maestoso第2=[181]・第3=[183]・第4=[185]≈CD2 20:40 | 流動的 | ラッパ | アルト独唱が第1の災いを告げ、[180] で合唱が「かくして主は罪ある人類を罰する」と応じる(実測)。以後、独唱が災いを告げ→合唱が応じる、という組が第4まで繰り返される。第2=燃える山が海に投げ込まれる(アルトとテノール)、第3=苦よもぎの星(テノール、アルト・バスも同語)、第4=日月星の消滅(独唱四重唱)(実測)。第1のラッパからヨハネの「すべての死者が玉座の前に立った」まで、全体が単一の巨大なブロックで、絶えず戻ってくるラッパ主題がそれを繋ぎ止める(Hrdlicka)。 → 聴取:「独唱の告知→合唱の応答」が4回続くので、数えながら聴ける。災いが増すたびに手段が増やされていく。 |
| 第5・第6のラッパ(合唱フガート) | [186] Allegro · 6/8主題入り:T・B → [188] A → [189] S第6=[191] | 流動的 | ラッパ | 第5のラッパで拍子が歓呼するような 6/8 に変わり、合唱のフガートが始まる(Hrdlicka+実測:主題「Die Posaunen künden euch das Gericht Gottes des Herren」がテノールとバス→[188] アルト→[189] ソプラノの順に入る)。Hrdlicka はここと第6のラッパの独奏トランペットを挙げるが、ヴォーカルスコアには楽器指定が印字されていないため本ガイドでは未確認とする。第6でラッパ主題が拡大され、2つの新しい対位主題が加わる——これがのちの4主題フーガの部品になる(Hrdlicka)。 → 聴取:ここから終わりまで、音楽はずっと同じ主題の育て方をしている。第6で加わる2本の新しい線が、数分後のフーガで主役になる。 |
| 第7のラッパと4主題フーガ Gott, der Herr regiert die Welt! |
第7=[196][198] 内「Nun sind die Reiche…」[199] 4主題の同時提示 | 流動的 | ラッパ | 第7のラッパのあと、合唱が「この世の国は我らの主のものとなった」と斉唱し(実測:[198] の区間内、番号の印字はない)、[199] から4主題フーガ(クヮドルプル・フーガ)が始まる(Hrdlicka)。実測では [199] でソプラノ・アルト・テノール・バスがそれぞれ違う歌詞と違う旋律を同時に提示し(バスは1小節遅れ)、以後 [200][201][202] と声部の配置を組み替えながら反復する。頂点で音楽は非物質化し、輝かしい高音のトランペットに収斂してタムタムの一撃だけが支える、と Sinkovicz は書く。異同:楽譜に「Fuga」の語は印字されていない(実測)。4主題フーガという呼び名は分析者のもの。 → 聴取:4つの声部が全部ちがう言葉を同時に歌っている。だから歌詞は聴き取れないが、それでいい——4本の線が絡んでいることだけ分かれば足りる。 |
| 最後の審判 Vor dem Angesichte dessen |
[215] Un poco lento[217]/[219]–[220] 書の主題[221] Più vivace(火の池)≈CD2 29:50 | 流動的 | ラッパ + 書 | ヨハネの独白もラッパ主題で始まる(Hrdlicka)。「そして書物が開かれた」でチェロに書の主題の転回形、「また別の書物が開かれた」で原形が戻る(同。実測では [217] と [219]–[220])。火の池=「第二の死」は、弦の6連符と管の16分音符が半音階でずれ合い、増三和音が重なり、音量が激しく膨らんでは萎む(同)。 → 聴取:プロローグで7回鳴った「書の主題」が、ここで最後に戻る。しかも転回形が先、原形が後——封印を解く前と解いた後で向きが入れ替わっている。 |
| 区分 | 位置 | 調 | 担当 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 新しい天と地 Und ich sah einen neuen Himmel |
p.183([222]–[223] の間)· 3/4 · pp≈CD2 32:40 | 流動的 | ヨハネ | 火の池の混沌が Lento で鎮まり、ヨハネが pp で「わたしは新しい天と新しい地を見た」と歌い出す(実測)。ここから音楽はゆっくりと、主の出現の様式へ移っていく(Hrdlicka)。 → 聴取:ここが折り返し点。破局の描写が終わり、以後は最後まで音量も語法も穏やかな側に留まる。 |
| 主の声(3回目) Ich bin das A und das O |
[225] Andante · 3/4 | 流動的 | 主の声 | 主の声が3度目に現れる。最初の25小節は、歌詞も音楽もプロローグの「Ich bin das A und das O」とそのまま同一(Hrdlicka)。今度はその周りを、弦の16分音符と管の8分3連が包む——Hrdlicka はこれを主の声の周りに張られた「ちらちらする音の絨毯」と呼ぶ。 → 聴取:約2時間ぶりに、まったく同じ旋律が戻る。違うのは伴奏だけで、旋律は召命のときのまま。1回目は「昇って来い」、3回目は「わたしは彼らの神となる」。 |
| イ長調への着地 er wird mein Sohn sein |
[234]→ 12小節の保続低音 | イ長調 | 主の声(バス) | それまで移ろいつづけていた和声が、「彼はわたしの子となる」の語で明るいイ長調に落ち着き、12小節の保続低音(Orgelpunkt)を経て終結のハレルヤのニ長調へ流れ込む(Hrdlicka)。実測との異同:この箇所に調号は付いておらず(調号なしのまま)、イ長調は臨時記号で作られている。調号が実際に変わるのはハレルヤの入りで、そこでシャープ2つ=ニ長調になる。 → 聴取:「わが子となる」の一語で和音が落ち着く、その瞬間を待つ。約2時間さまよってきた和声が、ここで初めて足を止める。 |
| ハレルヤ Halleluja! |
p.190 [236] の数小節後Un poco allegro, ma maestoso · 3/4≈CD2 39:20 | ニ長調 | 混声合唱+管弦楽+オルガン | 二重線で調号がシャープ2つに変わり、合唱と管弦楽の全勢力がハレルヤの喚呼に合流する(実測+Hrdlicka)。「ハレルヤ」を歌うリズムはハンガリーの舞曲から採られている(Hrdlicka)。喚呼の合間にコラール風の合唱節(「Danket dem Herrn」ほか)が挟まり、実測ではこのコラール節が8つ、3/4 のハレルヤ楽節と 4/4 のコラール節が accel./rit. をはさんで交互に続く。コラール節は二重符と拍子の交替によって、そのつど加速していき、制動をかける「アーメン!」に着地するように記譜されている——この律動の多様さで際限のない喜びを表すのだ、と Hrdlicka は書く。 → 聴取:「ハレルヤ」の連呼と、落ち着いたコラールが8回交代する。そのたびに速くなっては「アーメン」で止まる、という呼吸の繰り返しが終曲の設計。ヘンデルの《メサイア》のハレルヤとよく比べられるが、作りはまったく別物。 |
| 男声合唱の感謝 Wir danken dir, o Herr, allmächtiger Gott |
[244] Tranquillo · C調号なしに戻る≈CD2 44:40 | 調号なし | 男声合唱(無伴奏) | ハレルヤがフェルマータで止まると、シュミットは器楽をすべて引き上げる。合唱のテノールとバスだけが残り、伴奏譜は全休——完全な無伴奏(実測)。素朴なグレゴリオ聖歌のような調子で感謝の歌が歌われる(Hrdlicka)。Sinkovicz はこの、ピアニッシモで唱える修道士のコラールこそ、この作品の音響上の見どころだとする。異同:Hrdlicka は「男声合唱のユニゾン」と書くが、実測ではテノールとバスが同じリズムで別の音高を歌う2声体。 → 聴取:2時間鳴りつづけた管弦楽とオルガンが、ここで完全に消える。大合唱の直後に来る数分の無伴奏が、いちばん耳に残るという人は多い。 |
| 閉幕挨拶 Ich bin es, Johannes, der all dies hörte und sah |
p.202([246]–[247] の間)Moderato · C[250] アーメン≈CD2 46:40 | 冒頭と同一 | 挨拶 | ヨハネが「これらすべてを聞き、見た者、それがわたし、ヨハネである」と歌い出す。この閉幕の挨拶は冒頭の「Gnade sei mit euch」と音楽的に完全に同一で、唯一の違いはヨハネの「アーメン」に合唱が加わることだけ(Hrdlicka)。本ガイドの実測でも、冒頭(p.3)と閉幕(p.202)はテンポ標語 Moderato、4/4 拍子、4小節の器楽の前置き、伴奏の f marcato、続く強弱の運び(più f → p)まで一致し、ヨハネの入りも同じ形だった。[250] でヨハネと合唱の全声部が ff の「Amen!」を歌い、オルガンと管弦楽が加わって閉じる(実測)。 → 聴取:ここで大きな環が閉じる。冒頭を覚えていれば、いま何が戻ってきたのかは説明なしで分かる。最後のアーメンにだけ合唱が加わるのが、2時間を経た唯一の変化。 |