Ursa Epicure楽曲ガイド
バルトーク:歌劇《青ひげ公の城》Sz.48
Béla Bartók: A kékszakállú herceg vára, Op. 11, Sz. 48(1911年作曲・1918年初演)|一幕・約60分
調の弧の地図:F♯の闇に発し、扉が開くたびに音の光が増し、第5の扉で対極のC(F♯から三全音=最遠隔)の頂点へ。第6の扉から翳りはじめ、F♯の闇へ還る。幅は参照録音の各場面の演奏時間に比例。上枠ボルドー=F♯(額縁)。
出典・底本
主な分析ソース:Gavin Plumley のプログラムノート(marquee.digital)、LA フィル/ハリウッドボウルの楽曲解説(hollywoodbowl.com・血の動機の音名と楽器)、Timothy Johnson「Tonality as Topic」(査読誌 Music Theory Online 23.4, 2017・第5の扉)、relatedrocks.com(個人サイトの分析エッセイ・扉ごとの音色)、英語版 Wikipedia(成立・編成・調の弧)。
位置の準拠:リハーサル番号([30] 等)は本ガイド実測(底本: Universal Edition ヴォーカルスコア U.E. 7026、1922年、洪・独語版。IMSLP #98108)。各扉の開扉時点と場面の起点のみ実測し、小節番号の通し資料は未確認のため小節では示さない。調号は全曲を通じて置かれず(実測)、調の表記は響きの中心(実測+上記ソース)。
参照録音(時間目安の基準):イシュトヴァーン・ケルテス指揮ロンドン交響楽団、ワルター・ベリー(青ひげ公)、クリスタ・ルートヴィヒ(ユディト)/Decca/1965年11月・キングズウェイ・ホール録音。トラックが「冒頭+扉1〜7」の8つに切られているため、区分の「≈mm:ss」はトラック境界からの累算(10秒単位)。トラック内部の途中経過は未計測のため時間を記さない。この録音は語りのプロローグを含まない(トラック構成にプロローグがない)。
本文で言及する論:Plumley、Johnson。分析者・版により見解が分かれる箇所(第5の扉の練習番号など)は本文に両論を併記する。
曲全体の区分の俯瞰(額縁+7つの扉)
区分場面・光位置調聴きどころ
プロローグ語り手(吟遊詩人)の口上冒頭の音楽に重ねて「舞台は外か、内か」と観客に問う語り。上演・録音では省略されることも多く、参照録音にもない。
前枠:夜の城暗いホール・7つの黒い扉冒頭〜 / ≈0:00F♯(旋法的)低弦の夜の主題。ユディトが壁の湿りに触れた瞬間、短2度の「血の動機」が初めて軋む。
扉1 拷問部屋血赤の光[30] / ≈14:20トレモロと鋭いトリルの軋み。壁に開く「傷口のような」四角。
扉2 武器庫黄赤の光[42]の後 / ≈18:40トランペットの軍楽。輝かしいのに、ここにも血が乾いている。
扉3 宝物庫金色の光[54] / ≈22:50Dトロンボーンの深い響きと、きらめく高音の金の音。最も美しい王冠に血。
扉4 庭青緑の光[60] / ≈25:20E♭系ハープのグリッサンドとホルンの牧歌。白い百合の根元に血。
扉5 領土白い光の奔流[74]の直後 / ≈30:20Cオルガン+全奏のC長三和音の柱。作品の頂点。ただし雲は血の色の影を落とす。
扉6 涙の湖影が差す[91] / ≈37:20aハープと木管のアルペジオが波打つ、静かな白い水面。ここから弧は闇へ下る。
扉7 昔の妻たち銀の月光[121] / ≈49:503人の妻が生きて現れる。ユディトは4人目として夜をまとう。
終結完全な闇[138]〜[140]F♯圏冒頭の夜の音楽が戻り、「もう永遠に夜だ」。ppp perdendosi で額縁が閉じる。
曲を貫く糸:短2度の「血の動機」が7つの扉をすべて縫い、調はF♯(闇)→C(光・第5の扉)→F♯(闇)の対称の弧を描く。語り手のプロローグと終結の闇が全体を額縁のように囲む。
上演の姿:登場人物は青ひげ公とユディトの2人だけ(昔の妻たちは黙役・実測)。原語のハンガリー語による上演が標準。語りのプロローグは省略されることが多く(Wikipedia)、置くかどうかは録音でも分かれる。
歌劇《青ひげ公の城》——7つの扉と調の弧
台本:バラージュ・ベーラ(ハンガリー語)|1911年作曲(1912年改訂・1917年に現在の結末)|初演 1918年5月24日 ブダペスト王立歌劇場、エジスト・タンゴ指揮
場面構造(額縁+7つの扉)×調の弧(F♯→C→F♯)
中心音:F♯(旋法的)→C→F♯ 歌手2人+語り手(任意) 4管編成+Org・Cel・Xyl・2Hp 舞台上金管:Tp4・AltTrb4 練習番号 [1]–[140](UE 7026) 約60分(参照録音 59:24)
前枠 夜の城
F♯
扉1
拷問部屋
扉2
武器庫
扉3
宝物庫 D
扉4
庭 E♭系
扉5
領土 C
扉6
涙の湖 a
扉7・終結
→F♯
幅は参照録音(ケルテス/ロンドン響)の各トラックの長さに比例。
主要主題・動機(凡例)
血の動機(短2度)
半音でぶつかる2音の軋み。初出は「壁が濡れている」の場面のG♯とA、ホルンとオーボエ(LAフィル解説)。以後ユディトが血に気づくたびに現れ、扉1ではクラリネットと弱音器付きトランペット、扉5ではトロンボーンと弦のトレモロ、扉6ではG–G♯へと衣替えする(同)。
城の主題(夜のF♯)
F♯を中心とする五音音階風の旋律。低弦がユニゾン・pp misterioso で歌う(冒頭 Andante ♩=92・3/4、実測)。Plumley いわく「薄明のF♯の和音を、民俗的・五音音階的な語法で綴る」。冒頭と終結に現れて全体を囲む。
光の和音柱(第5の扉のC)
C長三和音を起点とする平行三和音の連なり。根音は五音音階をたどる(Johnson)。全オーケストラとオルガン(実測:Tutti ed Organo pleno、fff→ffff)、Larghissimo・4/4 の和音の柱。
涙の湖のアルペジオ
ハープ・クラリネット・フルートの10連符の波が、低弦のトレモロの上で静かにうねる(実測)。涙の雫はオーボエ・コーラングレ・ファゴットの短2度、次いで三全音(relatedrocks)。
前枠 プロローグ〜夜の城(F♯)
区分位置調主題内容・性格・聴取ポイント
語り手のプロローグ 冒頭(音楽に重ねて) 吟遊詩人(レゲシュ)が観客に語る口上。「舞台は外か、内か、皆さま?」——物語を心の内側の劇として観るよう促す(Wikipedia ほか)。UE 7026 ではプロローグの詩が冒頭の楽譜の上に印刷され、語りの途中で幕が上がる(実測)。上演・録音では省略されることが多い。
→ 聴取:プロローグ付きの上演に当たったら、それだけで少し珍しい。語りの背後ですでに夜の主題が始まっている。
城の主題(冒頭) Andante ♩=92 · 3/4≈0:00 F♯(旋法) 低弦が pp misterioso のユニゾンで、F♯を中心とする五音音階風の旋律を歌う(実測+Plumley)。調号はなく、以後全曲どこにも置かれない(実測)。まもなく木管がC長三和音圏の音型を差し込み、F♯とCの三全音の緊張が最初のページから予告される(Plumley)。
→ 聴取:この「夜の音」を覚える——約1時間後、終結でそのまま戻ってくる。
到着〜濡れた壁 [2]〜[11] 流動的 鉄の小扉が開き、青ひげ公の第一声「Megérkeztünk(着いた)」。ユディトは家族も婚約者も捨ててきたと歌い、扉は閉じる。[11] で壁の湿りに触れ「Vizes a fal!(壁が濡れている)」——ここで短2度の血の動機が初めて軋む(初出はG♯とA、ホルンとオーボエ:LAフィル解説。スコアでも [11] にオーボエのキュー・実測)。
→ 聴取:血の動機の初出。まだ血は見えず、湿りだけがある。
扉を叩く・城の溜息 [24]の前後〜[29] 流動的 「7つの大きな黒い扉」を見たユディトが「Nyisd ki!(開けて)」と迫り、第1の扉を叩く。ト書き「叩くと、地の底から重く嘆くような溜息が湧き上がる。長い暗い廊下を夜風が泣き抜けるように」(実測)。ユディトの「Jaj!」。やがて青ひげは最初の鍵を渡す。
→ 聴取:城そのものが生き物のように鳴る。この「溜息」は第6・第7の扉の前でも戻ってくる。
扉1〜5 上り坂——闇から光の頂点へ
区分位置調主題内容・性格・聴取ポイント
扉1 拷問部屋
血赤の光
[30] Sostenuto ♩=88≈14:20 錠が音を立て、壁に「傷口のような」血赤色の四角が開く(ト書き・実測)。ヴァイオリンのトレモロと高音の鋭いトリルが軋み(実測。総譜では木管と木琴:relatedrocks「木管と木琴の弧を描く音階が鞭のよう」)、血の動機はクラリネットと弱音器付きトランペットに移る(LAフィル解説)。「Láncok, kések(鎖、ナイフ)」。それでもユディトは「怖くない」と光の筋を指す。
→ 聴取:短2度がどれほど「痛い」音か、最初の扉が教えてくれる。
扉2 武器庫
黄赤の光
[42]の後 Allegro risoluto≈18:40 「静かに、そっと開ける」と歌った直後、錠が鳴り黄赤色の光が差す(ト書き・実測)。弱音器付きトランペットの付点リズムのファンファーレ(実測)が青ひげの武勲を鳴らすが、ここでも「Vér szárad a fegyvereken(武器に血が乾いている)」。青ひげはさらに3つの鍵を渡す——「見ても、決して問うな」。
→ 聴取:軍楽の輝きと、その中の翳り。ファンファーレの直後に血の動機が差す。
扉3 宝物庫
金色の光
[54] Assai andante≈22:50 D 「温かく深い金属の響き」(ト書き・実測)——3本のトロンボーンの和音で扉が開き、金色の光が床に伸びる。上では独奏ヴァイオリン2本(実測。総譜ではチェレスタも加わる:relatedrocks「重ねられた長三和音が複調的にきらめく」)が宝石のきらめきを撒く。響きの中心はD(実測)。だが最も美しい王冠に血の染み——楽章中で一番短い場面が、一番あっけなく翳る。
→ 聴取:2分半しかない「金の音」。トロンボーンの深さと高音のきらめき、その落差。
扉4 庭
青緑の光
[60] Lento ♩=80–76≈25:20 E♭系 花咲く枝が扉から溢れ、青緑の光(ト書き・実測)。ハープのグリッサンドが pp で開き、ホルンの独奏が牧歌を歌う(実測)。フラット系の柔らかい和声(実測)。「Embernyi nagy liljomok(人の背丈ほどの百合)」——だが白い薔薇の根元は血で濡れている。青ひげは答えず「お前が花を咲かせる」とだけ歌う。
→ 聴取:ホルンの牧歌と、その足元の血。美しさと不穏の同居は、この先の扉でも繰り返される。
扉5 領土
白い光の奔流
[74]の直後Larghissimo ♩=66≈30:20 C ユディトが第5の扉を引き開けると、「まばゆい奔流となって光が流れ込む」(ト書き・実測)。全オーケストラとオルガン(実測:Tutti ed Organo pleno、fff→ffff)のC長三和音の柱。平行三和音の根音は五音音階をたどる(Johnson)。ユディトは目を覆って「Ah!」と叫び、青ひげは「Lásd ez az én birodalmam(見よ、わが領土だ)」。やがて雲が「血の色の影」を落とし、血の動機がトロンボーンと弦のトレモロで戻る(LAフィル解説)。位置の異同:Johnson(MTO)はこの箇所を練習番号73とするが、本ガイド実測(UE 7026 ヴォーカルスコア)では [74] の直後にあたる。
→ 聴取:ここで初めて城の「外」がひらけ、オルガンが音の柱に加わる。そして直後、ユディトの返しが p senza espressione(表情なしで)と指示される冷たさ(実測)まで聴き取れると、この頂点の不気味さが分かる。
扉6〜7 下り坂——光から闇へ
区分位置調主題内容・性格・聴取ポイント
扉6 涙の湖
影が差す
鍵[90]・湖[91]Adagio ♩=80≈37:20 a 鍵が最初にひと回りした瞬間、城が「すすり泣くような深い溜息」を上げ(ト書き・実測:低弦のグリッサンドの嗚咽)、扉が開くとホールに影が走る(実測)。ハープ・クラリネット・フルートの10連符の波が低弦のトレモロの上で静かにうねり(実測)、ユディトは pp で「Csendes fehér tavat látok(静かな白い湖が見える)」。「これは何の水」——「Könnyek(涙だ)」。血の動機はここでG–G♯に(LAフィル解説)、涙の雫は木管の短2度から三全音へ(relatedrocks)。響きの中心はa(relatedrocks)。
→ 聴取:全曲で最も静かな水面(pppまで沈む)。第5の扉の ffff の直後にこれが来る、その落差そのものがドラマ。
問いと接吻 [100]〜[117] 流動的 青ひげは腕を開き「Gyere Judit(おいで、ユディト)」。長い接吻。だがユディトの問いは止まらない——「昔の妻たちを、どう愛したの」。青ひげは [101] で初めてはっきり拒む:「Az utolsót nem nyitom ki(最後の扉は開けない)」(実測)。ユディトは湖の涙も王冠の血も並べ立て([114]〜)、ついに「妻たちは殺されたのだ」という噂を口にする。
→ 聴取:愛の音楽と尋問の音楽が同じ場面で交互に鳴る。弦の歌とオーボエの執拗な音型の綱引き。
扉7 昔の妻たち
銀の月光
鍵[118]・開扉[121]Molto adagio ♩=56≈49:50 青ひげは7つ目の鍵を渡す:「Fogjad…(受け取れ)」[118]。錠が鳴ると第5・第6の扉がひとりでに溜息とともに閉じ、ホールは目に見えて暗くなる(ト書き・実測)。[121] で扉が開き「月光のような銀の光」が差し込む。[123]、3人の昔の妻たちが冠と宝を身にまとい、誇り高くゆっくりと現れる——生きて。青ひげは跪く。ユディトの驚愕:「Élnek, élnek(生きている)」。
→ 聴取:「殺された妻たち」ではなかった——音楽も一気に夢のような荘重さに変わる。夜明け・昼・夕べの3人に、青ひげは讃歌を捧げる。
終結 後枠——F♯の闇へ
区分位置調主題内容・性格・聴取ポイント
ユディト、第7の扉へ [135]〜[137] 流動的 青ひげは「お前は夜に見つけた4人目」と歌い、ユディトにマントと冠と宝石を着せていく。「Te voltál a legszebb asszony(お前こそ最も美しい妻だった)」[135]。ユディトは重さに身をかがめ、銀の光の帯に沿って妻たちの後を追い、第7の扉が閉じる(ト書き・実測)。オーケストラだけが fff の頂点 [137] で叫ぶ。
→ 聴取:声が消えたあとの間奏 [137] が、この場面で一番雄弁。
終結(後枠) [138]〜[140]Molto tranquillo F♯圏 冒頭の夜の音楽が戻る(実測:シャープ書き込みの終止圏。Plumley「暗い旋法的な音世界へ帰る」)。青ひげの最後の言葉「És mindég is éjjel lesz már…(もう永遠に夜だ……夜だ……)」は言い切られる前に途切れ、完全な闇の中に青ひげが消える(ト書き・実測)。最後は ppp perdendosi(実測)。
→ 聴取:冒頭と同じ音楽が、いま全く別の意味で聞こえる。額縁が閉じる瞬間。
F♯(闇・両端)↔ C(光・第5の扉)の対比
F♯=闇(冒頭と終結)
低弦 pp のユニゾン、五音音階風の旋法、動かない夜(実測+Plumley)。窓のない城の音。オペラはここから出発し、7つの扉をすべて開けたあと、ここへ戻ってくる。
C=光(第5の扉)
全奏+オルガンのC長三和音の柱、fff→ffff、Larghissimo・4/4(実測)。平行三和音の根音が五音音階をたどる(Johnson)。ここで初めて城の「外」がひらける(Johnson の引く Antokoletz)。
対比の軸は調性=光と闇。F♯とCは半オクターヴ(三全音)隔たった、調的に最も遠い対(Wikipedia「F♯から調的に可能な限り遠い」)で、冒頭から木管のCが低弦のF♯に差し込んで三全音の緊張を予告する(Plumley)。音量・音色でも pp の低弦ユニゾン対 ffff のオルガン全奏と、両極が徹底している。
特異点
  • 第5の扉=アーチの要石。C長三和音の柱にオルガンが加わり(実測:Tutti ed Organo pleno)、舞台上の別働金管(トランペット4・アルトトロンボーン4:Wikipedia)が音の壁を厚くする。しかもこの絶頂で、ユディトの応答は p・senza espressione(表情なしで)と指示される(実測)——光が強いほど、彼女は冷えていく。位置は本ガイド実測で [74] の直後(Johnson は練習番号73とする。異同)。
  • 調号のない約60分。UE 7026 ヴォーカルスコアには全曲どこにも調号が置かれず、すべて臨時記号で書かれる(実測)。それでも各場面は固有の音の中心を持ち(Plumley)、F♯→C→F♯の対称の弧を描く(Wikipedia)。
  • 血の動機は「変奏される染み」。同じ短2度が、湿った壁(G♯–A・ホルンとオーボエ)→扉1(クラリネットと弱音器付きトランペット)→扉5(トロンボーンと弦のトレモロ)→扉6(G–G♯)と楽器と音高を替えて現れる(LAフィル解説)。動機の「展開」ではなく、同じ痛みが場所を替えて疼く書き方。
  • 扉は開くだけでなく、閉じていく。第7の鍵の錠が鳴ると第5・第6の扉がひとりでに閉じ、妻たちの場面の間に第4・第3の扉も順に閉じ、最後にユディトの背後で第7の扉が閉じる(ト書き・実測)。光の弧が一枚ずつ畳まれていく終盤の設計。
  • 語り手のプロローグと1917年の結末。1911年、リポートヴァーロシュ・カジノの新作オペラ懸賞を機に作曲され(ブダペスト・フィル解説)、1912年に手が入り、1917年に現在の結末が書かれた(Wikipedia)。初演は1918年5月24日ブダペスト、タンゴ指揮。冒頭の語り(「舞台は外か、内か」)は上演・録音でしばしば省かれ、置くかどうかがその上演の解釈表明にもなる。楽譜の扉には妻マールタへの献辞「Mártának」(実測)。
別の見立て:アーチ(弧)として読むと
主分析は台本どおりの場面構造(額縁+7つの扉)だが、多くの解説が指摘するとおり(Wikipedia「対称的な和声計画」ほか)、全体をひとつの弧として読むと音量・光・調が一枚の設計図に収まる。作曲家がそう名付けたのではなく、この語彙で読むとこう見える、という分析上の見立て:
上り(前枠→扉5)
F♯の闇から出発し、扉が開くたびに光と音量が増す。血の動機が各段に影を差す。
要石(扉5)
C=三全音の対極で光が最大に。オルガン+全奏 ffff。ここだけが「外」。
下り(扉6→終結)
涙の湖から翳りはじめ、扉が一枚ずつ閉じ、F♯の闇へ対称的に還る。

参考文献

Ursa Epicure 楽曲ガイド | ursaepicure.comガイド一覧