| 区分 | 場面・光 | 位置 | 調 | 聴きどころ |
|---|---|---|---|---|
| プロローグ | 語り手(吟遊詩人)の口上 | 冒頭の音楽に重ねて | — | 「舞台は外か、内か」と観客に問う語り。上演・録音では省略されることも多く、参照録音にもない。 |
| 前枠:夜の城 | 暗いホール・7つの黒い扉 | 冒頭〜 / ≈0:00 | F♯(旋法的) | 低弦の夜の主題。ユディトが壁の湿りに触れた瞬間、短2度の「血の動機」が初めて軋む。 |
| 扉1 拷問部屋 | 血赤の光 | [30] / ≈14:20 | — | トレモロと鋭いトリルの軋み。壁に開く「傷口のような」四角。 |
| 扉2 武器庫 | 黄赤の光 | [42]の後 / ≈18:40 | — | トランペットの軍楽。輝かしいのに、ここにも血が乾いている。 |
| 扉3 宝物庫 | 金色の光 | [54] / ≈22:50 | D | トロンボーンの深い響きと、きらめく高音の金の音。最も美しい王冠に血。 |
| 扉4 庭 | 青緑の光 | [60] / ≈25:20 | E♭系 | ハープのグリッサンドとホルンの牧歌。白い百合の根元に血。 |
| 扉5 領土 | 白い光の奔流 | [74]の直後 / ≈30:20 | C | オルガン+全奏のC長三和音の柱。作品の頂点。ただし雲は血の色の影を落とす。 |
| 扉6 涙の湖 | 影が差す | [91] / ≈37:20 | a | ハープと木管のアルペジオが波打つ、静かな白い水面。ここから弧は闇へ下る。 |
| 扉7 昔の妻たち | 銀の月光 | [121] / ≈49:50 | — | 3人の妻が生きて現れる。ユディトは4人目として夜をまとう。 |
| 終結 | 完全な闇 | [138]〜[140] | F♯圏 | 冒頭の夜の音楽が戻り、「もう永遠に夜だ」。ppp perdendosi で額縁が閉じる。 |
| 区分 | 位置 | 調 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 語り手のプロローグ | 冒頭(音楽に重ねて) | — | — | 吟遊詩人(レゲシュ)が観客に語る口上。「舞台は外か、内か、皆さま?」——物語を心の内側の劇として観るよう促す(Wikipedia ほか)。UE 7026 ではプロローグの詩が冒頭の楽譜の上に印刷され、語りの途中で幕が上がる(実測)。上演・録音では省略されることが多い。 → 聴取:プロローグ付きの上演に当たったら、それだけで少し珍しい。語りの背後ですでに夜の主題が始まっている。 |
| 城の主題(冒頭) | Andante ♩=92 · 3/4≈0:00 | F♯(旋法) | 城 | 低弦が pp misterioso のユニゾンで、F♯を中心とする五音音階風の旋律を歌う(実測+Plumley)。調号はなく、以後全曲どこにも置かれない(実測)。まもなく木管がC長三和音圏の音型を差し込み、F♯とCの三全音の緊張が最初のページから予告される(Plumley)。 → 聴取:この「夜の音」を覚える——約1時間後、終結でそのまま戻ってくる。 |
| 到着〜濡れた壁 | [2]〜[11] | 流動的 | 血 | 鉄の小扉が開き、青ひげ公の第一声「Megérkeztünk(着いた)」。ユディトは家族も婚約者も捨ててきたと歌い、扉は閉じる。[11] で壁の湿りに触れ「Vizes a fal!(壁が濡れている)」——ここで短2度の血の動機が初めて軋む(初出はG♯とA、ホルンとオーボエ:LAフィル解説。スコアでも [11] にオーボエのキュー・実測)。 → 聴取:血の動機の初出。まだ血は見えず、湿りだけがある。 |
| 扉を叩く・城の溜息 | [24]の前後〜[29] | 流動的 | — | 「7つの大きな黒い扉」を見たユディトが「Nyisd ki!(開けて)」と迫り、第1の扉を叩く。ト書き「叩くと、地の底から重く嘆くような溜息が湧き上がる。長い暗い廊下を夜風が泣き抜けるように」(実測)。ユディトの「Jaj!」。やがて青ひげは最初の鍵を渡す。 → 聴取:城そのものが生き物のように鳴る。この「溜息」は第6・第7の扉の前でも戻ってくる。 |
| 区分 | 位置 | 調 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 扉1 拷問部屋 血赤の光 |
[30] Sostenuto ♩=88≈14:20 | — | 血 | 錠が音を立て、壁に「傷口のような」血赤色の四角が開く(ト書き・実測)。ヴァイオリンのトレモロと高音の鋭いトリルが軋み(実測。総譜では木管と木琴:relatedrocks「木管と木琴の弧を描く音階が鞭のよう」)、血の動機はクラリネットと弱音器付きトランペットに移る(LAフィル解説)。「Láncok, kések(鎖、ナイフ)」。それでもユディトは「怖くない」と光の筋を指す。 → 聴取:短2度がどれほど「痛い」音か、最初の扉が教えてくれる。 |
| 扉2 武器庫 黄赤の光 |
[42]の後 Allegro risoluto≈18:40 | — | 血 | 「静かに、そっと開ける」と歌った直後、錠が鳴り黄赤色の光が差す(ト書き・実測)。弱音器付きトランペットの付点リズムのファンファーレ(実測)が青ひげの武勲を鳴らすが、ここでも「Vér szárad a fegyvereken(武器に血が乾いている)」。青ひげはさらに3つの鍵を渡す——「見ても、決して問うな」。 → 聴取:軍楽の輝きと、その中の翳り。ファンファーレの直後に血の動機が差す。 |
| 扉3 宝物庫 金色の光 |
[54] Assai andante≈22:50 | D | 血 | 「温かく深い金属の響き」(ト書き・実測)——3本のトロンボーンの和音で扉が開き、金色の光が床に伸びる。上では独奏ヴァイオリン2本(実測。総譜ではチェレスタも加わる:relatedrocks「重ねられた長三和音が複調的にきらめく」)が宝石のきらめきを撒く。響きの中心はD(実測)。だが最も美しい王冠に血の染み——楽章中で一番短い場面が、一番あっけなく翳る。 → 聴取:2分半しかない「金の音」。トロンボーンの深さと高音のきらめき、その落差。 |
| 扉4 庭 青緑の光 |
[60] Lento ♩=80–76≈25:20 | E♭系 | 血 | 花咲く枝が扉から溢れ、青緑の光(ト書き・実測)。ハープのグリッサンドが pp で開き、ホルンの独奏が牧歌を歌う(実測)。フラット系の柔らかい和声(実測)。「Embernyi nagy liljomok(人の背丈ほどの百合)」——だが白い薔薇の根元は血で濡れている。青ひげは答えず「お前が花を咲かせる」とだけ歌う。 → 聴取:ホルンの牧歌と、その足元の血。美しさと不穏の同居は、この先の扉でも繰り返される。 |
| 扉5 領土 白い光の奔流 |
[74]の直後Larghissimo ♩=66≈30:20 | C | 光 + 血 | ユディトが第5の扉を引き開けると、「まばゆい奔流となって光が流れ込む」(ト書き・実測)。全オーケストラとオルガン(実測:Tutti ed Organo pleno、fff→ffff)のC長三和音の柱。平行三和音の根音は五音音階をたどる(Johnson)。ユディトは目を覆って「Ah!」と叫び、青ひげは「Lásd ez az én birodalmam(見よ、わが領土だ)」。やがて雲が「血の色の影」を落とし、血の動機がトロンボーンと弦のトレモロで戻る(LAフィル解説)。位置の異同:Johnson(MTO)はこの箇所を練習番号73とするが、本ガイド実測(UE 7026 ヴォーカルスコア)では [74] の直後にあたる。 → 聴取:ここで初めて城の「外」がひらけ、オルガンが音の柱に加わる。そして直後、ユディトの返しが p senza espressione(表情なしで)と指示される冷たさ(実測)まで聴き取れると、この頂点の不気味さが分かる。 |
| 区分 | 位置 | 調 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 扉6 涙の湖 影が差す |
鍵[90]・湖[91]Adagio ♩=80≈37:20 | a | 湖 + 血 | 鍵が最初にひと回りした瞬間、城が「すすり泣くような深い溜息」を上げ(ト書き・実測:低弦のグリッサンドの嗚咽)、扉が開くとホールに影が走る(実測)。ハープ・クラリネット・フルートの10連符の波が低弦のトレモロの上で静かにうねり(実測)、ユディトは pp で「Csendes fehér tavat látok(静かな白い湖が見える)」。「これは何の水」——「Könnyek(涙だ)」。血の動機はここでG–G♯に(LAフィル解説)、涙の雫は木管の短2度から三全音へ(relatedrocks)。響きの中心はa(relatedrocks)。 → 聴取:全曲で最も静かな水面(pppまで沈む)。第5の扉の ffff の直後にこれが来る、その落差そのものがドラマ。 |
| 問いと接吻 | [100]〜[117] | 流動的 | — | 青ひげは腕を開き「Gyere Judit(おいで、ユディト)」。長い接吻。だがユディトの問いは止まらない——「昔の妻たちを、どう愛したの」。青ひげは [101] で初めてはっきり拒む:「Az utolsót nem nyitom ki(最後の扉は開けない)」(実測)。ユディトは湖の涙も王冠の血も並べ立て([114]〜)、ついに「妻たちは殺されたのだ」という噂を口にする。 → 聴取:愛の音楽と尋問の音楽が同じ場面で交互に鳴る。弦の歌とオーボエの執拗な音型の綱引き。 |
| 扉7 昔の妻たち 銀の月光 |
鍵[118]・開扉[121]Molto adagio ♩=56≈49:50 | — | 城 | 青ひげは7つ目の鍵を渡す:「Fogjad…(受け取れ)」[118]。錠が鳴ると第5・第6の扉がひとりでに溜息とともに閉じ、ホールは目に見えて暗くなる(ト書き・実測)。[121] で扉が開き「月光のような銀の光」が差し込む。[123]、3人の昔の妻たちが冠と宝を身にまとい、誇り高くゆっくりと現れる——生きて。青ひげは跪く。ユディトの驚愕:「Élnek, élnek(生きている)」。 → 聴取:「殺された妻たち」ではなかった——音楽も一気に夢のような荘重さに変わる。夜明け・昼・夕べの3人に、青ひげは讃歌を捧げる。 |
| 区分 | 位置 | 調 | 主題 | 内容・性格・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| ユディト、第7の扉へ | [135]〜[137] | 流動的 | — | 青ひげは「お前は夜に見つけた4人目」と歌い、ユディトにマントと冠と宝石を着せていく。「Te voltál a legszebb asszony(お前こそ最も美しい妻だった)」[135]。ユディトは重さに身をかがめ、銀の光の帯に沿って妻たちの後を追い、第7の扉が閉じる(ト書き・実測)。オーケストラだけが fff の頂点 [137] で叫ぶ。 → 聴取:声が消えたあとの間奏 [137] が、この場面で一番雄弁。 |
| 終結(後枠) | [138]〜[140]Molto tranquillo | F♯圏 | 城 | 冒頭の夜の音楽が戻る(実測:シャープ書き込みの終止圏。Plumley「暗い旋法的な音世界へ帰る」)。青ひげの最後の言葉「És mindég is éjjel lesz már…(もう永遠に夜だ……夜だ……)」は言い切られる前に途切れ、完全な闇の中に青ひげが消える(ト書き・実測)。最後は ppp perdendosi(実測)。 → 聴取:冒頭と同じ音楽が、いま全く別の意味で聞こえる。額縁が閉じる瞬間。 |