| 区分 | 性格・テンポ | 小節 | 主な素材 | 聴きどころ |
|---|---|---|---|---|
| A1 二つの呼びかけ | Assez lent・4/4 | m.1–16 | 叫びの和音/トランペットの沈む線/低音クラリネットの応答 | ff で立ち上がってすぐ萎れる和音が2度。そのたびにトランペットが半音階で沈み、低音クラリネットが小声で答える。この「呼びかけと応答」を覚えておくと曲の骨組みが見える。 |
| A2 歌の中核 | 6/4(Sans traîner) | m.17–37 | 弦の歌/コーラングレの独白 | 拍子が広がり、第1ヴァイオリンが長い歌をつむぐ。歌がヴィオラ・チェロ、コーラングレへ渡っていく受け渡しを追う。 |
| A3 頂点と崩落 | ff→silence/1er Mouvt | m.38–49 | 全奏の頂点(ハープ fff)/激発の音型 | ひと息の頂点で鳴るのはハープの fff とトライアングルだけの華——直後に高音の装飾句が舞い、スコアに「silence」と書かれた沈黙が2度訪れる。 |
| A4 エピローグ | 4/4・pp(Cédez—Très retenu) | m.50–65 | 室内楽的な対話 | ヴィオラとチェロの二重奏に、分割ヴァイオリンが高くこだまする。フェルマータの和音で前奏本体が閉じる。 |
| B 幕開き | Assez animé・6/4 | m.66–83 | きらめく三連音/トランペット mf léger | ここで幕(RIDEAU)。宝石がきらめく夜の広間へ、音楽がいきなり明転する。三連音のさざめきが静まると歌(m.84)が始まる。 |
| 区分 | 位置 | 響き | 素材 | 内容・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 第1の呼びかけ | m.1–6Assez lent・4/4 | 3♯圏・翳り | 叫び 沈む線 | 全奏が ff で膨らみ、すぐ萎れる。その残響の上でトランペット第1が f espress. の長い音から半音階で沈み(dim. → p marc. → pp)、m.3 末から低音クラリネットの独奏、続いてクラリネット2本の二重奏(p espress.〜poco cresc.〜dim. p)が小声で答える。低弦は保続音とピッツィカートの一点で支える。 → 聴取:「叫び→沈黙→小声の応答」のひと呼吸。この呼吸が前奏全体の単位になる。 |
| 第2の呼びかけ | m.7–12 | 同上 | 叫び 沈む線 | 同じ身振りがもう一度。今度はオーボエ・コーラングレも加わって色が濃くなる。 → 聴取:1度目と2度目の色の差。同じ問いが言い直される。 |
| 吐息の余波 | m.13–16リハーサル1 | 半音階 | 溜息の音型 | オーボエ+コーラングレ+ファゴットが p espress. の短い溜息のような音型を置き、分割した第2ヴァイオリンがこだまする。呼びかけの緊張がほどけて、歌の準備になる。 → 聴取:管の溜息に弦が寄り添う瞬間。 |
| 区分 | 位置 | 響き | 素材 | 内容・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 弦の歌・開始 | m.17–196/4・Sans traîner | 3♯圏 | 弦の歌 | 拍子が 6/4 に広がり(「引きずらずに」の指示)、第1ヴァイオリンが p dolce espress. で長い旋律を歌い始める。チェロが p のアルコで下支えし、ホルン第1が dolce marc. で合いの手を入れる。 → 聴取:ここからが前奏の「歌」。4/4 の重い足取りが 6/4 でふっと流れ出す。 |
| 歌の継続 | m.20–23m.20 Cédez très peu(9/4)→ リハーサル2 au Mouvt | 半音階 | 弦の歌 | 9/4 の1小節でふくらみを溜めてから、テンポを戻して歌が続く。旋律はヴィオラ・チェロ側へ降り、p espress.〜poco cresc. とうねる。 → 聴取:Cédez(ゆるめて)→ au Mouvt(元の速さで)の呼吸。この伸縮が全編で繰り返される。 |
| コーラングレの独白 | m.24–31m.29 Cédez(9/4)→ リハーサル3 au Mouvt | 半音階 | 弦の歌(管へ) | クラリネットと低音クラリネットが p espress. で絡み、m.27 からコーラングレの独奏(p dolce marc.)が歌を引き取る。内声のヴィオラ・チェロは八分音符の波で動き続け、もう一度 Cédez で溜めてから、ホルン2本の dolce marc. と弦の poco cresc. が次の高まりを準備する。 → 聴取:歌い手のリレー:ヴァイオリン→チェロ→コーラングレ。楽器が替わるたびに翳りの色も変わる。 |
| 積み上げ | m.32–37m.37 En serrant légèrement peu à peu | ♭側の和音が差す | 弦の歌+金管 | トランペットが p marc.、次いで p dolce sost. で加わる。フラット系の変化音を帯びた和音が差し込み、響きの底が動き出す。「少しずつ切迫して」の指示とともにクレッシェンドが始まる。 → 聴取:調号は3♯のままなのに、♭の付いた和音で空の色が変わる。頂点への助走。 |
| 区分 | 位置 | 響き | 素材 | 内容・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 頂点 | m.38–40リハーサル4=m.40 | 全奏 ff | 叫び(拡大) | molto のクレッシェンドが m.40 で全奏 ff の頂点に達する。ここで初めてハープ2台が fff のアルペッジョを掃き上げ、トライアングルのトリルとティンパニが加わる——そして同じ小節の中で molto dim.、一気に引いていく。 → 聴取:頂点は1小節だけ。ハープとトライアングルはこの瞬間(と幕開き後)にしか鳴らない。 |
| 静まりと沈黙 | m.41–434/4 に戻る | pp | 高音の装飾句 | pp に沈んだ弦とホルンの持続の上で、フルートとオーボエが6連符の速い装飾句をひらひらと舞わせる。più p → pp と薄れ、小節の最後にスコアはフェルマータ付きで「silence」と書く——音楽が一度、本当に止まる。 → 聴取:書き込まれた沈黙。頂点の直後に置かれた無音の1拍を数える。 |
| 激発と崩落 | m.44–491er Mouvt→Un peu retenu | ♭の変化音 | 激発の音型 | 沈黙を破って、オーボエ・クラリネット・弦が f marc. の付点音型をアクセントで叩きつけ、cresc. から ff へ——だが dim. molto で即座に pp へ崩れる。トランペットの pp の和音が ppp まで遠ざかり、ハープ第1の独奏アルペッジョとフルート独奏の3連符がひとしずく(m.48)。もう一度「silence」のフェルマータ(m.49)。 → 聴取:激情の空振り。燃え上がりかけては2度とも沈黙に呑まれる、この前奏で一番ドラマチックな数小節。 |
| 区分 | 位置 | 響き | 素材 | 内容・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 室内楽的エピローグ | m.50–57リハーサル5 | pp の透明 | 弦の歌(残照) | オーケストラが室内楽ほどに痩せる。ヴィオラとチェロの p espress. の二重奏が歌の記憶をなぞり、分割した第1・第2ヴァイオリンが pp で高くこだまする(オクターヴ上の p espress.)。クラリネット系が p dim. の和音を淡く敷く。 → 聴取:数人だけで奏でられているような数小節。大オーケストラの曲とは思えない親密さ。 |
| 終止 | m.58–65Cédez—Très retenu—Cédez | pp→フェルマータ | コーラングレ+弦 | 速度を段階的にゆるめながら、コーラングレが pp espress. の独奏でもう一度だけ歌い、フルート2本が p で応じる。チェロ・コントラバスの和音が pp で脈打ち、最後は3部に分割されたヴァイオリンの pp の和音にフェルマータ——前奏本体がここで閉じる。 → 聴取:閉じたのに終わらない感じ。次の瞬間に幕が上がるための、宙に浮いた終止。 |
| 区分 | 位置 | 響き | 素材 | 内容・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 明転 | m.66–69リハーサル6・6/4 | 明るい3♯圏 | きらめき | スコアに「RIDEAU(幕)」。木管群が poco f の三連音で和音を刻み続け、ヴァイオリンはユニゾンの三連音でトリルへ駆け上がり、低弦はピッツィカート、トランペットは mf léger、トライアングルが p で光る。ト書きは「第1幕と同じ広間。散らばった宝石がまだきらめき、外は夜。灯りの下で5人の妻たち——セリゼット、メリザンド、イグレーヌ、ベランジェール、アラディーヌ——が鏡の前で身支度を終えようとし、アリアーヌが手伝ってまわる」。 → 聴取:暗から明への一瞬の場面転換。フェルマータの余韻を破る三連音のさざめき。 |
| 展開 | m.70–74リハーサル7=m.70(9/4) | ♭側へ色変 | きらめき+ピッコロ | 9/4 にふくらんだ小節でピッコロの旋律が顔を出し、ハープも加わる。m.71 からフラット系の和音へ色が変わり、きらめきが揺らめきに変わる。 → 聴取:同じさざめきの中の光の加減。♭の和音が差すたびに翳る。 |
| 静まり——歌へ | m.75–83リハーサル8=m.75/歌の入り=m.84(リハーサル9) | p→pp | きらめき(減衰) | フルートのユニゾンの旋律(mf)を境に音楽は静まっていく。トランペット第1の独奏が ppp の長い音を糸のように張り、弦は p espress. の和音で沈み、ハープはハーモニクスを一粒ずつ。m.84(リハーサル9)でセリゼットが「私たちは魔法の城から出られなかった…」と歌い出す——演奏会用抜粋はその直前までで、オペラではここから第3幕の芝居が始まる。 → 聴取:器楽が言葉に席を譲る減衰。演奏会ではこの消え際が実質のコーダになる。 |