| 区分 | テンポ・小節 | 調 | 主な主題 | 聴きどころ |
|---|---|---|---|---|
| 序奏 | Andante mm.1–30 | ニ短調 | 騎士長の音楽(syncopated 和音/半音階下降) | いきなり不吉な和音で始まる。この暗い響きは終幕で騎士長が現れる場面の音楽で、序曲がオペラの結末を先に鳴らしている。覚えておくと本編で「これだ」と気づける。 |
| 提示部 | Molto Allegro m.31〜(B44・C56…) | ニ長調 → イ長調 | 第1主題/第2主題(f–p の対比)/第3主題 | 短調の緊張が一転、明るく駆け出す。3つの主題が出るが、どれもオペラ本編の旋律ではない。第2主題の強弱の入れ替わり(強→弱)を、主人と従者の掛け合いに聴くのが定番の読み。 |
| 展開部 | Molto Allegro 続き | 転調(安定しない) | 主に第3主題 | 主題が細かく分解され、調が定まらないまま揺れる。提示部の終わりとの切れ目がわざと曖昧で、どこから「展開」なのか耳では取りにくい。 |
| 再現部 | Molto Allegro(S246 付近〜) | ニ長調 | 3主題が主調で回帰 | 3つの主題が戻る。提示部で属調イ長調だった第2主題が、今度は主調ニ長調で鳴る。この「引き戻し」がソナタ形式の解決。 |
| コーダ/終結 | 末尾 | ニ長調/(歌劇版)ヘ長調へ | — | 演奏会版はニ長調の全終止で閉じる。歌劇版は最後の数小節でヘ長調へ転じ、休みなくレポレッロの登場(第1番)へ流れ込む。どちらの結尾かは曲末の閉じ方で分かる。 |
| 区分 | 位置 | 調 | 主題 | 内容・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 開始の和音 | m.1 | d moll | 騎士長 | シンコペーションの重いニ短調の和音と、それに応える属和音で幕を開ける(Griglio「syncopation で置かれたニ短調の和音、属和音がそれを映す」)。この不吉な響きは、第2幕フィナーレで石像の騎士長が現れる音楽と同じ素材。HC(属和音で受ける) 最初の一撃、この重さを覚えておく。第2幕フィナーレ、騎士長の石像が現れる場面で同じ音楽が戻る。 |
| 半音階の下降 | m.9 | 半音階 | 騎士長 | 低声部が半音階で下り、Griglio の言う G♯ が加わって不安をかき立てる。sf と p が交替し、光の差し引きのように明滅する。 → 聴取:じわじわ下がっていく低音の線。落ち着き先を見つけないまま緊張が溜まる。 |
| 三連符の高まり | A · m.15 | 転調 | 騎士長 | 付点・三連符が畳みかけ、強拍ごとの sf が痙攣のように打たれる。序奏はここで頂点へ向かい、やがて属和音の上で宙づりになって Molto Allegro へなだれ込む。 → 聴取:走り出す直前の「ため」。次に調が短調から長調へ切り替わる瞬間を待つ。 |
| 区分 | 位置 | 調 | 主題 | 内容・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 第1主題群(P) | m.31 | D dur | P | 短調の序奏から一転、ニ長調が p でそっと動き出す。主題が息を潜めて始まり、すぐに全奏へ膨らむ。序奏の重さの後だけに、この軽やかさが際立つ。 暗→明の切り替えがこの入り。同じニ音を軸に、短調の影が長調の光へ反転する。 |
| 移行(推進) | B · m.44 | D dur → | 移行 | f で刻む音型が推進力を作り、主調から属調イ長調へ橋を架ける。細かい音符の連なりが止まらず、次の主題の準備をする。 → 聴取:勢いが増していく箇所。調が「よそ」へ移っていく気配を追う。 |
| 第2主題(S) | C · m.56 | A dur | S | 属調イ長調で、f と p が小節ごとに入れ替わる主題。Griglio はこの強弱の対比を「ドン・ジョヴァンニとレポレッロの二人組」と読む(豪胆な主人=f、へつらう従者=p)。譜面でもレター C から f p f p が明瞭。属調で確保 強と弱が小節ごとに入れ替わる。これを主人ドン・ジョヴァンニと従者レポレッロの掛け合いに聴くのが定番の読み。 |
| 第3主題・終結群(K) | D–E · m.67–77 | A dur | 第3主題/K | 属調のまま、短い下行音階の断片(MCO の描写)による第3主題と終結の音型が続く。MCO はこの序曲の提示部が2主題でなく3主題を持つと指摘する。この第3主題がのちに展開部の中心になるため、提示部の閉じと展開部の入りが溶け合う。 ここで出る素材を覚えておく。次の展開部で崩されるのがこの第3主題。 |
| 区分 | 位置 | 調 | 主題 | 内容・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 第3主題の展開 | G–N 付近 | 転調 | 第3主題 | MCO によれば、展開部は主に提示部の第3主題を扱う。そのため提示部の終わりと展開部の始まりの切れ目が判別しにくい。調が定まらず、短い音型が楽器から楽器へ渡り、緊張が保たれる。 → 聴取:「どこから展開に入ったか」を無理に探さず、調が落ち着かない不安定さそのものを味わう。 |
| 区分 | 位置 | 調 | 主題 | 内容・聴取ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 第1主題の回帰 | O · m.207 | D dur | P | MCO は「再現部は聴き分けやすい。3つの主題がすべて戻る」とする。第1主題がふたたび主調ニ長調で現れ、展開部の不安定さが解ける。 → 聴取:不安定な浮遊のあと、聞き覚えのある第1主題が戻る安堵。ここが再現の入り。 |
| 第2主題の回帰(主調化) | S · m.246 | D dur | S | 提示部でイ長調だった f-p の第2主題が、再現部では主調ニ長調で鳴る(譜面でもレター S から f p f p の対比が再登場)。差異:提示部=属調イ長調(レター C)/再現部=主調ニ長調(レター S)。二人組の掛け合いが「本来の調」へ引き戻される。 C と S の第2主題を聴き比べる。同じ掛け合いが違う調(属調イ長調→主調ニ長調)で鳴るのが分かれば、ソナタ形式の解決を耳で捉えたことになる。 |
| コーダ/終結 | 末尾 | D dur / (歌劇) F dur | 終結 | 演奏会版はニ長調の全終止で自己完結して閉じる。歌劇版は MCO によれば最後の6小節が短いコーダとしてヘ長調へ転調し、休みなくレポレッロの登場(第1番・導入曲)へ続く。PAC(演奏会版) → 聴取:曲末が「きっぱり終わる」か「ふっと次へ流れる」か。前者なら演奏会版、後者なら歌劇版の結尾。 |